海と山に囲まれた生まれ故郷・新宮の路地を見続け、
差別の構造に向き合い、自己を冷徹に対象化した中上作品をフィールドワークする書。03年刊。
〈主な内容〉
はじめに−大泊海岸の風景−
一 書くこと、被差別、解放
二 「一番はじめの出来事」と「十九歳の地図」
◆分裂の構図
◆修羅場
◆「一番はじめの出来事」における不安
◆「一番はじめの出来事」の次にくるもの
◆「十九歳の地図」におけるやりばのない怒り
◆新宮の意味
三 「岬」まで
◆新宮への帰途
◆現と幻−境界線上の幻覚
◆朧げな近親の者
◆ねじくれたまっとうさ
◆熊野山中から路地へ
◆論理の抑止と「路地」への回帰
四 「岬」の世界
◆「岬」再読
◆円環としての出発作品「岬」
◆「岬」の人間関係
◆視線
◆死の回避
五 「枯木灘」へ
◆ある飛翔 六作品に見る「岬」からの飛翔
六 「枯木灘」の世界
◆「枯木灘」の物語
◆吉本隆明の「枯木灘」論
男と視線/歴史/実父と浜村龍造/三つの名前と二つの血族/
風景の意味/労働と自然
◆「岬」「枯木灘」にみる路地
吉本の中上追悼文/描かれた路地の人びと
七 「枯木灘」以降
◆「枯木灘」以降の作品群
◆「三月」について
◆柄谷行人の『化粧』解説
明らかな誤りと強引な「解説」
◆実験−多岐にわたる視点
性の転換・性交渉/差別/民族
八 「鳳仙花」へ、試論としての「大島」
◆発表時期と「大島」の物語
◆「枯木灘」との相違と類似
◆試論としての「大島」
九 「鳳仙花」の世界
◆「鳳仙花」は母物語か
◆描かれた母
◆「鳳仙花」の母
◆「語り」と人称
◆「鳳仙花」は「母権思想」の物語か
◆フサ・女の性
◆「鳳仙花」の意味
一〇『熊野集』の世界
◆一九八〇年から八二年
◆『熊野集』の評価と謎
◆『熊野集』という表題
◆幻怪な綺譚と日常的な話柄の報告
◆『熊野集』の危うさ
◆『熊野集』と路地、あるいは被差別部落
一一 『千年の愉楽』の世界
◆『千年の愉楽』への三者の評価
◆春日地区改善事業の歴史と中上
一九九〇年代初頭の変貌/戦後の変貌の歴史
◆『千年の愉楽』執筆期
◆『千年の愉楽』の世界
もうひとつの国と中本の血/中本の血の相対化/
新流入者の復讐
一二 「地の果て 至上の時」の世界
◆問われるべき主題
◆鈴木孫一伝説と一向一揆起源説
◆孫一伝説と秋幸
◆孫一伝説導入と被差別感
終章
あとがき
参考図書