福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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教育三法改悪を批判する
『部落解放』2001年8月号〉

(2001/07/19up)

 ある女性の教師に会った。彼女は、授業で沖縄の米軍についてのビデオを教材として使ったら、「反米的である」と名ざしで都議会でとりあげられ、いま、授業を持てない状況である。
 別のやはり女性の教師は、授業で「日の丸・君が代」についてとりあげ、「上からの指図ではなく、自分の頭で考えることが必要ではないか」と言ったら、親からのクレームがつき、教育委員会により問題にされている。
 全国で、このようなことが、次々起きている。
 教師は、授業の内容について、多方面から批判や意見を受けることは当然かもしれない。しかし、人権教育をやって、なぜ教育委員会の処分の対象になるのか。去年十二月、人権教育・啓発推進法が成立した。むしろ人権教育や人権啓発は、法律によっても推進されるように規定されているのだ。
 通常国会で、残念ながら、教育三法の改悪案が成立した。教育三法といわれているのは、「学校教育法の一部を改正する法律案」「社会教育法の一部を改正する法律案」「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案」の三法である。
 地方教育行政の組織及び運営に関する改正法は、都道府県教育委員会は、@児童又は生徒に対する指導が不適切であること、A研修等必要な措置が講じられたとしてもなお児童又は生徒に対する指導を適切に行うことができないと認められること――の双方の要件にあたる者を免職したうえで、引き続き都道府県の教員以外の職に採用することができることを規定している。
 危惧するのは、「児童又は生徒に対する指導が不適切である」というのが、実は、問題関心を持った教師を排除することに使われないかということである。国会での「教員が不適切であるという判断を誰がするのか」という質問に対し、「校長が判断する」というのが答弁である。だとすると、校長と教員が対立しているときは、安易に教員の「排除」に使われていくのではないか。「日の丸・君が代」の問題について、強制などに反対した教師たちの多くは、処分を受けている。
 学校教育法の改正法は、子どもについて、問題を起こす子どもは、教室から追い出し、他方、「できる子ども」は、高等学校を卒業していなくても大学に入学させることができるし、大学院へも飛び入学ができることを定めている。
 授業その他の教育活動の実施を妨げる行為を繰り返し行う小・中学生の出席停止を明文で設ければ、「面倒くさい」子どもは、教室からこれまた「排除」されてしまうだろう。
 その子どもがどんな問題をかかえているかを考える暇もなく、表面的に「授業の邪魔になる子」を学校に来なくてよいとすることは、真の問題の解決から遠くなってしまうこともあるのではないか。
 教室において、「問題のある子」を排除し、「エリート」はどんどん飛び級ができるとすれば、「ともに学ぶ」ということはどんどんうすれていくだろう。
 また、小・中・高等学校における社会奉仕体験活動の充実に努めるとしていることも、どうだろうか。これは、「奉仕の義務化」につながらないか。遠山大臣は、「努力義務であり、義務づけたり、強制することはない」と繰り返し答弁していた。
 「あれっ、これは以前にもあったな」と思い出すと、「日の丸・君が代」国旗・国歌法案審議のとき、「(学校現場における)国旗掲揚・国歌斉唱の強制はない」と当時の有馬大臣は繰り返し答弁していた。しかし、法律が成立した途端、すぐさま記者会見の場に「日の丸」が掲揚され、学校においても「日の丸・君が代」強制が進んでいる現状がある。
 子どもたち全員に、奉仕が強制されるのではないだろうか。「なぜボランティアではなく、社会奉仕なのか」という質問に対し、答弁では、「子どもたちの自主性の尊重」が強調されていた。それならボランティアとするべきなのだ。  学校現場に対して、眼を光らせなければならないと思う。



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