福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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死刑廃止は世界の流れ
『部落解放』2001年09月号〉

(2001/08/20up)

 六月の末に、フランスのストラスブールに行ってきました。欧州評議会に出て、スピーチをするためです。欧州評議会とは、ヨーロッパの国会議員のなかから選ばれた人たちによって構成されているいわばヨーロッパの国会。そこでのテーマが、死刑だったのです。ご存じEU(欧州連合)に属するためには、死刑を廃止しなくてはなりません。欧州評議会のオブザーバー国五カ国のうち、メキシコ、カナダ、バチカン市国は、すでに死刑を廃止しています。オブザーバー国のうち日本とアメリカだけが死刑を廃止していないのです。
 約二十七カ国の国会議員の人たちが、次々と死刑についてスピーチをしました。私は、日本の国会の死刑廃止議員連盟を代表して、日本の死刑制度の問題点、現状(事前告知が一切なされず、その日の朝に連れていかれること、死刑確定囚になると、家族と弁護士以外には面会や文通ができないことなど)を話しました。
 ほんとうに感動したのは、各国の国会議員の人たちの死刑廃止についての確信です。「何と野蛮な制度であることか」、あるいは「死刑と文明はあいいれない」ということが繰り返し、繰り返し、主張されました。
 結局、オブザーバー国である日本とアメリカが二〇〇三年一月一日までに死刑の廃止、あるいはモラトリアム(停止)について前進がない場合は、日本とアメリカに対し、オブザーバーステイタス(オブザーバーとしての地位)を剥奪するかどうか議論するという決議が採択されました。
 地球温暖化問題についての京都議定書をめぐる国際会議でもそうですが、アメリカと日本に対する批判は、激しいものがあります。
 日本にいると、「厳罰化すべきだ」「死刑」という傾向がますます強まっているように思います。でもヨーロッパに行くと、もっというと、他の世界の国々を見ると、死刑廃止は、大きな流れのなかの一つです。アジアのなかでもカンボジアは、最近、死刑を廃止しました。ジェノサイド(集団虐殺)があった国であるにもかかわらず、否、ジェノサイドがあったからこそ死刑を廃止したとの説明がありました。
 こちらの世界では、「死刑はあって当たり前」「死刑をなくせなんて変な人間の言うこと」と考えられているのに対し、ヨーロッパ、あちらの世界などに行くと、「死刑は、野蛮である」「死刑は文明とあいいれない」とされていて、まるで鏡でさかさまに見ているような奇妙な感覚にとらわれます。
 フランス、ドイツ、イタリア、そして、北欧などは、もちろん廃止していますから、「えっ、日本に死刑があるのか」「えっ、日本は死刑をいまだに執行しているのか」とほんとうに驚かれたりします。その反応にあらためてこちらも驚いたりしています。
 今回は、再審で無罪となった免田栄さん(狭山事件の石川さんもほんとうに再審無罪をかちとりたいものです)、学者の菊田幸一さん、アムネスティ・インターナショナルなどNGOの人たち、兄弟を殺されて、犯人は死刑となったが、死刑廃止を訴えている原田さんなどとも一緒でした。彼らは、死刑廃止のNGO会議に出席しました。免田栄さんは、実に多くのメディアに登場しました。長く拘束され、再審無罪をかちとって釈放されたことが、「死刑台からの生還」として、大きく採り上げられたのです。日本では、四人の人が、死刑確定囚となってから再審無罪となって釈放されています。
 ところで、日本とアメリカ。死刑を存置している二つの国の死刑も大きく異なります。アメリカは、オクラホマのビル爆破の犯人の処刑が、まるで見せ物興行的にメディアで採り上げられました。日本は、完全に密行性です。「何日に何人の死刑を執行した」ということだけを法務省はプレスリリースしています。それもここ二年前からです。以前はそのことすらも公表していませんでした。
 私は、夢想します。アジアの国々が死刑を廃止したら、アジアは大きく変わるでしょう。日本も死刑を廃止した国になったら、日本は根底のところで変わると思います。二〇〇三年のリミットまで、いろんな人とがんばりたい。



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