福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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日米地位協定の改正を
『部落解放』2001年10月号〉

(2002/03/13up)

 一九九五年に、沖縄で少女に対する強姦事件が発生して、日米地位協定の問題が大きくクローズアップされた。被疑者の段階で身柄を確保する権限が日本の警察にはないということが大問題になったのである。最近もやはり沖縄で、女性に対する性暴力の問題が起こり、この地位協定がふたたび問題となった。
  たしかにアメリカ側が、日本の警察による捜査が自白偏重ではないか、長時間の取り調べがあるではないか、取り調べのときに弁護士の立ち会いが認められていないではないかということを米兵の身柄の引き渡しを許さない理由に挙げていることは、実は、もっともなことである。たとえば長時間の取り調べについては、代用監獄の問題がある。被疑者の身柄の拘束は、拘置所ではなく、「代用」として、実はほとんど警察が行っているため、身柄の拘束をしている者と取り調べをしている者が同じ警察となり、その構造自体が人権侵害ではないかと問題にされている。だから、日本側は、単に身柄をよこせというだけでなく、捜査のあり方そのものを改善していく必要がたしかにあるのだ。そのことも実は重要なことだ。
  しかし、根本的なところでは、地位協定の不平等という問題がある。身柄の引き渡しがなされないので、いままで米兵は、事件が起きるとアメリカに帰ってしまうということもあった。被害者にしてみれば、放火をされても殺されてもひき逃げをされても、十分な捜査がなされず、そして、十分な捜査がなされないということは、起訴をすることが困難で、そもそも刑事裁判をきちんとやっていくことができないということになる。
  加害者が米兵であるか日本人であるかによって、こんなにも違ってくるのだ。米兵にとってみれば、「日本の警察は自分を逮捕できない」と思っていれば、何をやっても大丈夫、実は治外法権といったゴーマンな意識をもってしまうのではないか。  地位協定には、ほかにもさまざまな問題がある。
  日本において、外国人は、出入国管理及び難民認定法の規制を受ける。しかし、米軍の人たちは、このビザだとか何とかという規制を受けない。また、運転免許証などもそのまま使える。
  さらに、関税などが免除されている。したがって、米兵の人たちは、軍人用販売機関などで、関税や消費税などを免除された安い物品を入手できる。また、国税と地方税の免除の規定もある。
  地位協定には、米軍に日本の国土を提供する根拠条項があり、また、公益事業などの利用優先権を与えている。このように、さまざまな特権、例外を付与しているといえる。
  そして、裁判権についても日本側にたいへん不利となっている。そもそも日米両者が裁判権をもつもののうち、アメリカが第一次的に裁判権をもつのは、まず、もっぱらアメリカの安全もしくは財産に被害があったもの、そして、公務中の作為あるいは不作為によるものである。つまり、たとえば、公務中の犯罪とされれば、アメリカが第一次的に裁判権をもつのである。いま、とくに問題になっている身柄の引き渡しのケースは、公務中ではないときの犯罪である。「公務中」とされれば、日本側は、手を出せなくなってしまう。
  刑事だけでなく民事の点も問題である。米軍機の墜落事故、基地騒音、車両事故、農業・漁業などへの被害など、いろんな被害が生じている。しかし、地位協定によると、米軍が公務として、日本において政府以外の第三者に損害を与えた場合は、日本が処理をすると定め、アメリカは当事者とならないのである。
  ほかにも、基地を返還するときに、アメリカは、原状回復義務を負っていないのである。基地は、重金属などによって環境汚染されている可能性がきわめて高い。土壌の浄化など一切しないで、アメリカは、日本に汚染されたままの基地を返還してもいいのである。ドイツとアメリカの間では、原状回復、つまり、基地を借りたときのきれいな状態で返すことが義務づけられている。
  日米地位協定は、日本の憲法、法律の大きな例外となっている。そして、きわめて不平等である。日米安保条約そのものの問題もさることながら、地位協定の一つひとつを憲法や人権の観点から洗い直し、改正する必要があると思う。



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