福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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差別撤廃世界会議に出席して

〈『部落解放』2001年12月号〉

(2002/03/13up)

 八月末から、南アフリカ共和国のダーバンで開かれた反人種主義・差別撤廃世界会議に出席した。部落解放同盟からは、組坂委員長をはじめ全国から多くの人が参加、「反差別国際運動」(IMADR)は、門地、複合差別、人身売買のワークショップを主催し、もちろん私も参加した。
  会議で採り上げられたテーマは、実に多岐にわたる。植民地主義、奴隷制、奴隷貿易に対する賠償問題、先住民族の権利、少数民族の権利、ダリット差別や部落差別のような門地差別、人種差別と女性差別の複合差別、刑事手続きにおける人種差別、人身売買など、実にさまざまである。連日、デモも行われた。
  NGOフォーラムの開会式で、南アフリカ共和国のムベキ大統領は、レイシズム(人種差別)と言った後に、必ずセクシズム(女性差別)と言う演説をし、南北格差の問題、経済格差の問題を強調した。メアリー・ロビンソン国連人権高等弁務官は、「アフター・ダーバン(ダーバン後)」という言葉を何度も繰り返した。「ダーバン後、すべての政府をモニターする必要がある」ともみんなに呼びかけた。私は、「アフター・ダーバン」という言葉に本当に励まされた。この大会の一つのテーマは、パレスチナの問題であった。会議が始まった後、PFLPのナンバー2がミサイルで殺されるという事件が起きた。アラブの人たちが写真を掲げて抗議をしていた姿は、忘れられない。
  この会議に、はじめアメリカ合衆国は、アフリカ系アメリカ人でトップにのぼりつめたパウエル国務長官を出席させるといわれていた。しかし、奴隷貿易、パレスチナ問題が議題になるといわれて、高官を送らなかった。そして、途中で、パレスチナ問題が議論になると、事務方レベルも含めて、全部引き上げてしまった。アメリカのこのような態度は、正しかったのだろうか。
  南アフリカ共和国は、アパルトヘイト下でANCをはじめとするアパルトヘイトをなくそうとする側と白人政府の間で、内戦ともいえるような激しい弾圧と闘いが繰り広げられてきた。そんななかでとにかくテーブルについて、何年間も長期にわたって話し合いを続け、アパルトヘイトの廃止と新政権の樹立にこぎつけた。その間三十年近く投獄されていたネルソン・マンデラさんが新大統領になった。とにかくテーブルについて、話し合いを続けるということをやってきた南アフリカの人々にとって、今回のダーバン会議をアメリカがけって出ていったことは大変ショックだったようだ。
  先月号の『部落解放』に、このダーバン会議の記事が載せられていたので、重複は避けたいが、結局、過去の清算の問題に関しては、奴隷制と奴隷貿易が「人道に対する罪」であるとされた。謝罪と賠償については、明記されなかった。  門地差別の問題については、ダリットの人たちと部落解放同盟の大変な努力があったが、時間切れの形で採択されなかった。しかし、重大な大きなテーマとして、NGO会議、本会議で扱われた意義は大変大きいのではないだろうか。
  ところで、アフリカで開かれた人種差別撤廃会議であったものの、本当に苦しんでいるアフリカの多くの国々からの参加者は少なかった。また、差別を受けて苦しんでいる当事者たちは、中南米やオーストラリアやニュージーランドや北米から会議に出席することも難しかっただろうと思う。
  しかし、私にとっては、広範囲なテーマで議論され、日本のなかでとりくむべき課題も、たとえば人種差別禁止法を作ろうということなどの再確認ができて、元気をいっぱいもらった会議だった。
  ところで、世界のグローバリゼーションのなかで、かつて人種差別を受けていた所、植民地支配を受けていた所に、これまたひどいしわ寄せがきている。日本国内においても、実は同様である。この大会の直後におきた、アメリカでのテロ事件は、実に多くのことを私たちに投げかけている。貧困や差別をなくすために私たちが何をなすべきかを問うたのが、この人種差別撤廃会議だったのだ。それにしても、世界でもっとも豊かなアメリカが最貧国といわれるアフガニスタンを空爆するニュースは、本当に心が痛む。




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