福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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ホイッスル・ブロワー

〈『部落解放』2002年04月号〉

(2002/03/20up)

 原子力発電所の欠陥がわかる、ある自動車メーカーのある自動車に欠陥があり、リコールもうまくいっていないことがわかる、ある工場の排水のなかに有毒なものが含まれていることがわかる、機密費の使い道がおかしいことがわかる、警察のなかで事件のもみ消しがなされていることがわかる、食品の安全性に問題があることがわかる……これらの多くは、内部告発によってわかったことである。「外」の人には、「なか」のことはわからない。内部の腐敗や問題点の多くのものは、内部告発によって、初めて外に出ている。そんな人たちの存在がなかったら、いろんなものは、まったく闇のなかだっただろう。
 アメリカに、ホイッスル・ブロワー法という法律がある。「口笛吹き保護法」と訳されているが、一般的に日本では「内部告発者保護法」といわれている。
 「口笛を吹く権利」は、一九七五年ごろから、アメリカの論文で発表されている。消費者運動の高まりのなかでとくに使われるようになった。「ホイッスル・ブロワー」とは、どこかの部署の腐敗堕落の実態を告発する人をいう。ベトナム戦争反対運動、ニクソン大統領のウオーターゲート事件などを通じて、不正告発者を保護する連邦法や州法ができていった。アメリカでは、公務員を中心として自分の所属する集団である政府当局が不正を行ったり、法違反の行為を行った場合には、告発を理由として不利益を受けないだけでなく、それに対する報償まで認めている。
 イギリスにも公益公開法がある。内部告発の奨励と内部告発者の保護が目的である。患者への虐待を含めた治療中の誤診、財政的な不法行為など「公益」に反する行為を内部告発した関係者が、処遇面で差別された場合は、労働裁判に持ち込むことができ、また、告発したために解雇された従業員は、被った損失相当額を賠償金として受け取れるのである。
 さらに、お隣の韓国でも最近、腐敗防止法ができた。政治家や官僚の不正腐敗を予防・根絶することを目的に立法されたものである。この腐敗防止法は、内部告発者の保護もきちんと規定している。内部告発を活性化するため、告発者に対する保護規定をおいている。まず、委員会および調査機関は告発者の身分を公開してはならず、告発者は身辺保護措置の要求が可能となる。所属機関は、告発者に不利益を与えてはならず、与えた場合には一千万ウォン(約百万円)以下の過料が科される。
  ひるがえって、日本ではどうだろうか。
  日本では、二〇〇〇年七月、原子炉等規制法が改正され、従業員が内部の違法行為を監督官庁に通報しても不利益を被らなくてすむようになった。しかし、これは、どれだけ使われているだろうか。
  会社を相手にセクシュアル・ハラスメントや差別の問題で裁判を起こしたときに、会社の従業員で会社に不利益なことを証言してくれる人を捜すことがほんとうに大変である。会社を辞めた人で証言してくれる人を捜すしかない。辞めた人でもなかなか証言してくれないのである。
  内部告発は、命がけであったりする。あるいは、内部告発をした人が、訴えられたりする。
  退職したケースであるけれども、ある退職した会社役員が会社の内部情報を公表したものがある。東京の生命保険会社の元役員が、退職後に月刊誌などに社内の人事問題や融資先との取引内容などの情報を提供した。会社は、「会社の秘密情報を雑誌に提供されて損害を受けた」と主張し、元役員に賠償を求め提訴した。東京地裁は「守秘義務違反であり、請求通り二億五千五百万円を支払うよう」命じた。巨額のお金を払わなければならなくなったのである。
  日本では、多くの企業の就業規則に機密漏洩に対する懲戒の定めがあり、退職後の守秘義務を定めて、しばっているところもある。
  情報公開法ができたけれども、情報公開の要求をするためには、内部の情報をある程度知っている必要がある。情報公開法と内部告発者保護法は、社会の腐敗などをなくしていく車の両輪であると思う。




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