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増えている受刑者
〈『部落解放』2002年05月号〉
(2002/05/01up)
刑務所を訪れると、受刑者の数が多く、満杯状態で、刑務官の人たちも大変な思いをしていることを知ることができる。
「雑居房」といわれる複数で住む所は、畳の上に六人分の布団を敷いて、いっぱいだったが、いまや八人分の布団を敷くようになっている所もある。きちきちで、夜中にトイレに立ったら、人を踏んづけてしまいそうだ。「独居房」(一人ではいっている所)に、二人はいっている所もある。二段ベッドを雑居房や独居房にいれている所もある。せっかく作ってきた花壇をつぶして家屋を建てたり、食堂なども狭い状態で食事をしなければならない。
受刑者は九六年末には四万四百十三人だったのが、二〇〇一年十二月末には五万三千六百四十六人で、収容率は一一〇パーセントになっている。収容率の高い刑務所は、なんと一三四パーセントとなっている。
アメリカは、一九八九年には、受刑者の数は約百万人であった。それが、現在は二百万人をはるかにこえている。十年の間に受刑者の数が二倍以上になったのだ。
日本の「犯罪白書」(二〇〇一年版)によると、新たに収容された受刑者数は二万七千四百九十八人なので、日本においてもどんどん増えているのだ。なぜこんなことになったのだろうか。
犯罪社会学会の報告書によれば、「起訴率の上昇及び公判請求件数の増加が、新確定受刑者を増加させていること、また、言渡し刑期、特に覚せい剤の言渡し刑期の長期化が、収容期間の長期化をもたらしていることが明らかとなった」のである。裁判所に質問をしたところ、平均して四カ月、言い渡し刑期は長くなっているとの回答があった。一般的に長くなっているのである。
そして、最近、特徴的なことは、「初入」(はじめて刑務所にはいる人)が増加していることである。「累入」(はじめてではない人)の数は、それほど増加していないのだが、初入の人が増えていることが、受刑者の数を増やしている。初入の人は、一九九一年には、七千七百三十八人だったのが、二〇〇〇年には、一万三千三百七十一人となっている。約二倍となっているのである。
厳罰化が、受刑者の数を増やしている。 ところで、一般的には、無期懲役の人は、簡単に外に出られると思われている。しかし、実際は、まったくそうではないことも知ってほしい。
二〇〇〇年の犯罪白書によると、一九九一年には、三十三人の仮出獄(仮釈放)があったにもかかわらず、その後減り続け、二〇〇〇年にはわずか六人となっている。無期懲役の人の数は増えているのであるから、パーセンテージからいえば、かなりの減少となっている。現在、千人以上の無期懲役刑の人がいるのに、六人しか一年間に釈放されていないのであるから、ほとんどの無期懲役刑の人にとって外へ出ることは絶望的になっている。六人のままだと五十年間でも三百人しか外へ出られないのである。
現在、死刑を廃止するかわりに終身刑を導入したらどうかという議論がある。私も死刑よりは終身刑のほうがいいとは思うが、ここで強調したいことは、現在の無期懲役刑が、実質的には、終身刑になっているということである。
ところで、米国では、刑務所人口と福祉の充実度が反比例の関係にあるという興味深い指摘がある。 前述した犯罪社会学会の報告書によれば、現役の刑務官の人がこう述べている。「最近、さつま揚げ一個の万引で初犯(執行猶予期間中)の高齢者が受刑している姿を見ると、福祉の手から漏れた人々にとって、刑務所が最後の受け皿となっている気がしてしかたがない」
このままどんどん刑務所の人口を増やしていくのではなく、福祉を充実させ、失業率を下げ、社会不安を減らしていくしかない。はじめて刑務所にはいる人をどんどん増やしていくような政策は、どこかで変更が必要なのではないか。再犯を防ぐような職業訓練や就職口を見つけるためのサポートも不足している。
過剰収容をなくしていく手立てを講じないかぎり、社会は悪循環に陥っていくのではないだろうか。
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