|
戦争のための有事立法
〈『部落解放』2002年06月号〉
(2002/06/04up)
国会に有事立法三法案が提出されている。
有事立法として出されている三法案は、1.武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案、2.安全保障会議設置法一部改正案、3.自衛隊法一部改正案の三つである。
有事立法は、「テロだ、防災だ」とまぶした言われ方をすることがあるけれども、とくに今回出されている有事立法は、まさに戦時立法である。有事立法は、戦争のための、戦争の準備のための法律である。
平和のときは平和憲法、戦争のときは戦時立法というわけにはいかなくなる。有事立法が出てくることで、憲法は停止をするのだ。
外国の軍隊が攻めてきたら大変だから、有事立法は必要ではないかと思う人もいるかもしれない。
しかし、武力攻撃事態法案は、武力攻撃(武力攻撃のおそれのある場合を含む)が発生した事態または事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態への対処を規定するとしている。武力攻撃のおそれも、それが予測されるに至った事態も含んでいるのである。総理大臣のカンによって戦争が始まってしまう。
さらに問題なのは、日米安保条約と周辺事態法とつながっていることである。米軍が戦争を開始すれば、自衛隊も一緒に行動を起こすことになる。
日本を外国が攻めてきたときに法律が必要でしょうという話ではないのである。
さらに、米軍が戦争をするときに、自衛隊がともに戦争をするというだけにとどまらない。日本全体が、日本のなかに住んでいる人、施設・資源などが戦争のために利用されていくのである。日本を「不沈空母」にするという法律は、憲法に反するというだけでなく、一人の国民として嫌である。
武力攻撃事態法案は、国の責務、地方公共団体の責務、指定公共機関の責務、国と地方公共団体との役割分担、国民の協力を規定している。
また、内閣総理大臣は、地方公共団体の長に対して、対処措置を実施すべきことを指示することができるとされている。一九九九年に成立した周辺事態法九条は、国は地方公共団体の長に対し、協力を求めることができるとしている。これに対し、武力攻撃事態法案が、指示することができるとしていることは、非常に大きな変化である。日本国憲法は、地方分権を規定している。地方分権、自治の考え方は、今日ますます広がっている。総理大臣が、地方公共団体の長に対して指示権を持つということは、この地方分権を壊し、総理大臣を頂点とするピラミッドを作っていくことになる。地方公務員もこれに巻き込まれていってしまう。
国民ももちろん協力させられる。自衛隊法の改悪案によれば、協力させられるだけでなく、協力しなければ、処罰される場合も出てくる。たとえば、ガソリンスタンドが「戦争のために燃料を使うので、売却するな」と言われて、それに反すれば、六カ月以下の懲役に処せられる。立ち入り検査拒否も処罰の対象となる。
戦争に協力しないという行動が処罰されるということは、思想・良心の自由も侵害するものではないだろうか。
空港や港、道路も戦争のために使われる。
戦争は、遠い所の話ではなく、「あなたの家が作り変えられる」という話である。法案は、家屋の形状変更ができるとしているだけだが、形状変更と家が壊されるということは紙一重かもしれない。
二年以内に、国民の権利を制限する立法を作ることも今回の立法に含まれている。
ダグラス・ラミスさんは、有事立法について「国民への威嚇である」と言った。たしかに、「戦争に協力しろ、戦争に協力させるぞ」という法律である。協力しなければ、場合によっては、処罰される。処罰されるのは怖いから、みんな協力していくのではないか。
二十一世紀を人権の世紀にと願うのであれば、有事立法の人権侵害の面がもっともっと議論されるべきだと考える。
|