福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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有事法制は私たちの問題

〈『部落解放』2002年07月号〉

(2003/01/23up)

 武力攻撃事態法案、自衛隊法改正案など有事法制三法案が国会に上程されている。
 いったい、国民の生活はどうなるのだろうか。公務員の人たちは、戦争に協力させられるのだろうか。
 自衛隊が防衛出動をした場合、医療・土木建築工事・輸送に従事する業者およびその労働者に対し、業務従事命令を発することができる(自衛隊法一〇三条二項)。業務従事命令の内容は、自衛隊の任務遂行のために必要な業務をおこなうことであり、つまり「徴用」である。
 ところで、今回の有事法制三法案の作成の過程で、業務従事命令に従わない人に対して処罰をするということも検討された。最終的には盛り込まれなかったけれど、将来的には、業務従事命令に従わなかった人間を処罰することも立法として出てくるのではないか。
 処罰されないまでも業務従事命令を働く現場で拒否することは実際、困難だろう。もちろん、生命の危険があり得るような業務だから拒否できると考えられるが(千代田丸事件最高裁判決)、自衛隊法一〇三条による処分に対しては、行政不服の申し立てすらできないのである。
 また、都道府県知事は、物資の保管を命ずることもできるし、物資の収用も命ずることができる。そのために必要なときは立入検査もすることができる(自衛隊法一〇三条)。
 今回の自衛隊法改正案は、物資保管命令に違反して、物資を隠したり捨てた人は、なんと六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金に処せられてしまう。戦争に協力しないという行動が処罰されるのである。戦前にあった国家総動員法は、刑罰の制裁をもって人々をしばり、戦争のために「総動員」していった。
 戦争に協力しないと刑務所行きになるという法案の提案は、いままでの法律とまったく違うものである。
 武力攻撃事態法案八条は、「国民は、……必要な協力をするよう努めるものとする」と規定している。
 今後、国民の責任はどんどん増えていくだろう。政府は、国会の審議のなかで、今後整備する有事法制に関し、有事における被災者救援や被害復旧などのために、一般国民が参加する民間防衛組織の設置に関する新たな法整備をすると述べた。「えっ、民間防衛組織!」という感じである。国民を防衛のために訓練させるという答弁も出てきている。「そんなものに参加したくないよ」と私の知り合いの二十代の人が言う。
 有事法制三法案は、これで終わるのではない。これからどんどんできていくのである。武力攻撃事態法案は、法制の整備もうたっている。たとえば、保健衛生の確保及び社会秩序の維持に関する措置、輸送及び通信に関する措置、国民の生活の安定に関する措置などである。「社会秩序の維持に関する措置」という言葉を聞くと、治安維持法ではないかとギョッとする。今後、国民の権利を制限する法律を作ることが宣言されている。なかみがよくわからないまま、将来、法律を作ることに賛成することはできない。
 将来の法律が白紙委任ということだけではなく、武力攻撃事態法案のなかみもよくわからないことだらけである。国会の答弁でもはっきりしないことが多い。「対処措置」として、「生活関連物資等の価格安定、配分その他の措置」がとれるとある。これは、物価統制であり、配給(なつかしい言葉)である。米軍に対しては、戦争のために物資・施設を提供し、国民は耐乏生活を送れということだろうか。
 「対処措置」には、内閣総理大臣の自治体・指定公共機関に対する「総合調整」「措置の実施の指示」「直接執行」について規定している。「総合調整を経て」とはしているものの、結局は「指示」や「直接執行権」が認められる内閣総理大臣に全権が集中する。「指示権」を持つということもすごいけれども、それをこえて自治体の権限をとりあげて、「直接執行」することもできるのである。こんな法案は初めてである。
 有事法制三法案は、あなたの問題であり、わたしの問題である。




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