福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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「愛国者法」の先にあるもの

〈『部落解放』2002年08月号〉

(2003/01/23up)

 二十一世紀を平和の世紀に、人権の世紀にといわれてきた。そのとおりで、そうなるために努力しようというところだ。「人権」という点ではたしかに進んだ面もある。また、もちろんさまざまな取り組みがなされなければならない。  しかし、二十一世紀が戦争の世紀、人権侵害、人権を抑圧していく世紀となる危険性や傾向はいっぱいある。
 「国際人権」という考え方があり、どうやって人権の国際化をしていくか、人権をグローバル・スタンダード化していくかということが課題である。国連の規約人権委員会や人権委員会などの議論、五回にわたる国連女性会議、国連の人口会議、これまた国連の人種差別撤廃会議、環境会議などが大きな役割を果たしている。
 国連などが人権の基準を決め、それを各国に及ぼしてきて、各国の人権状況を高めていこうという取り組みは、一定の成果をあげている。
 しかし、今の私の危惧は、このようなことと逆の動きである。「テロ」に反対するという名のもとに各国で人権抑圧的な法律がつくられる、「正義」という名のもとに多国籍軍が戦争を行うということである。六月末に開かれたサミットのテーマの一つはテロ対策。国連では、包括的テロ防止条約が議論され、「テロ」の定義をめぐって激論が闘わされている。
 ひどい条約ができて、それが各国におりてきて、ひどい国内法ができる……そんな構造がつくられつつある。
 「エシュロン」というアメリカを中心とした世界にまたがる盗聴システムがある。EUの報告は、このエシュロンの存在を認めた。それもショッキングなことだが、もう一つ私にとってショックだったのは、EUは、このエシュロンが問題で、なくすべきだという結論をとらずに、このエシュロンに対抗するためにEUもエシュロンのようなものを持とうと結論づけていたことである。巨大な盗聴システムが幾重にもできていくことは、一人ひとりの個人にとって、とんでもない人権侵害以外のなにものでもない。  良い方向にそろえるのではなく、人権侵害的なことがそろえられていく。
 二〇〇一年十月二十六日、わずか一カ月の議論で、アメリカ合衆国は、「テロ行為を阻止し防止するために必要な手段を提供することによってアメリカを団結・強化する法」(通称「愛国者法」)を成立させた。この「愛国者法」の主な内容は、「テロリスト」の定義を拡大し、テロ実行を協議するだけで取り締まりの対象とすること、テロ活動への支援を処罰の対象としていること(その団体にカンパをしたり、署名をするだけでも「かかわりを持った」として取り締まりの対象となり得る)、テロ関与の疑いがあると当局が判断した移民の逮捕勾留期限を七日間に延長、権利を制限すること、テロ関与の疑いありと当局が判断した人物のあらゆる通信機器の傍受ができること、テロ関与の疑いがある人物、コンピューターを悪用する人物のEメール記録などの強制的な開示を(プロバイダーなどに)求めることが可能となること、外国人学生・教員監視機関の設置などである。
 アメリカ合衆国だけではなく、イギリス、カナダにも似たような法律ができた。
 「テロ対策」という名目で、今までとてもできなかった基本的人権の制限ができるし、明らかに外国人に対する差別と迫害を生んでいる。
 サミットでテロ対策が議論された。
 G8といった大国は、国内に少数民族を多くかかえていることもあり、既得権益を守るうえで手を結んでいる。  さまざまな国の社会保障制度などがアメリカン・スタンダード、グローバル・スタンダードで壊されていっているように、さまざまな国の法制度、たとえば、むやみやたらと盗聴をしてはいけない、むやみやたらと身体の拘束をしてはいけない、ということが、上から壊されていっているような気がする。
 ほんとうに、二十一世紀を平和の世紀に、人権の世紀にするためには、一人ひとりがほんとうにがんばるしかないということを改めて思う。




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