福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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男性/女性の区別って何?
〈『部落解放』2002年09月号〉

(2003/01/23up)

  二、三年ぶりに知っている人に会ったら、男性だった人が女性になっていた。パネルディスカッションでご一緒したのである。少なくとも外見上は、ステキな女性である。彼が(彼女と言うべきかわからないけれど)女性の格好をして登場したという話は、風の便りに聞いていたけれど、別人のような気がした。
 ところで、私は、「アレッ」という気がした。正直言って、私は、彼のことを、男性としては小柄できゃしゃな人かなと漠然と思っていたのである。ところが、会ってみると、女性としては手が大きく、体格のいい女の人だと思ったのである。
 私自身は、「男は」「女は」ということから相当程度、自由だと自分では思っていたのに、無意識のうちに「男性にしては……だ」「女性にしては……だ」と思っていたのだろうか。人を見るときに、その人の「個性」というよりも、「男」「女」というフィルターを通して見ていたのかと、あらためて自分の意識にびっくりしてしまった。
 以前は、その人のことを、「男性」ということを前提に見ていたのに対し、いまでは「女性」ということを前提に見ているのかもしれない。
 そのことに逆に気づかされた。
 最近、ある競艇の女性選手が男性に変わったということが報道された。また、ある会社で男性が入社後「女装」をするようになったら、解雇され、その人はその解雇を裁判で争い、裁判所は解雇無効の判決を出した。昔は、なかなか声を出せなかったのではないだろうか。
 性同一性障害の問題に関して、当事者である人たちの話を何回か聞く機会があった。人によって、さまざまな考え方、意見があるのだけれど、みんな法律や制度によって苦しんでいることは共通である。
 事務所にある人が訪ねてきてくれた。女性の名前を持ち、戸籍上も男性の名前から女性の名前に変わっている。しかし、戸籍の性別は男性であり、続柄欄は「長男」となっている。
 いま、何人かの人たちが、戸籍上の性別を変えてほしいと家庭裁判所に申し立てている。
 たしかに、女性の名前を持ち、外見上も女性であり、身体的にも限りなく女性になっている人でも、いたるところで「男性」という表記にあい、混乱を生じているのである。
 たとえば、パスポートも「男性」であり、投票に行くと、自治体によって異なるけれども、「男性」となっているので、気後れして、投票場に行きたくないという気になるという声も聞いた。
 そう言えば、あらためて毎日の生活を見回すと、「性別」のチェックなどが結構あることに気づく。私は、先日たまたま海外旅行に行くために予防接種を受けた。用紙が配られ、チェックをすることになるが、男女をチェックする欄がある。アンケート用紙にチェックをしないということはあり得るかもしれないが、公的な書類が、自分の外見や身体上の特徴、名前と食い違うのは、ほんとうに大変だろうと思う。
 外国を旅行するときに、女性として行動するのに、パスポート上は「男性」となっていたら、相手だって混乱するだろうし、偽造パスポートと思われてしまうかもしれない。
 性同一性障害の問題は、何を男性とし、何を女性とするのかという問題に行き着くのかもしれないけれど、現に困っている人がいることを知ってほしいと思う。
 それにつけても、と私は思う。私自身も、「男性」「女性」という区別が段々あいまいになり、境界線上は重なる場合もあるのではないかという気になってくる。
 ゲイの人たちの権利は、性同一性障害の人たちの問題とは違う側面を持つ。一緒にはできないけれど、法制度も含めて日本ではごく最近まであまり議論されてこなかったこと、少数者の問題は顧みられてこなかったという点では共通である。  「人が幸せに生きるとは何か」ということを私たちに問うていると思う。




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