福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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住基ネットはゴメンだ
〈『部落解放』2002年10月号〉

(2003/01/23up)

 自宅に、十一ケタの番号が届いた。私は、世帯主となっていて、娘も私の住民票の構成員となっているので、娘の十一ケタも載っている。
 うーむ、頼んだ覚えもないのにこんなのが来てしまった。一方的につけられ、一方的に送りつけられ、一方的にデータを集められ、つなぎ、一方的に管理していくのだ。先国会で、野党で住基ネット凍結法案を出したのに、通らなかったのだ。  ご存知のとおり、同じ住民票でも番号はまったく違う。いろんな分類にもとづいて分けられ、専門家が見れば、番号を見ただけで、「こういう人」といえるのではないかと邪推する。
 私の知り合いは、語呂合わせでいくと「死ねよ四苦八苦」となったそうである。私はといえば、語呂合わせをする気もなく、ポイ。これを役所に「いりません」と送り返さなければならない。私の知り合いの多くは、「いりません」と役所に送り返すか、返しにいっている。「いりません」といったからといって、削除してくれるわけではないが、「NO」「いらない」という市民が多いことを役所に知らせることは、重要なことだろう。
 郵送の際に、番号が透けて見えたり、のりがうすくてはがれて見えるという指摘もあった。のりをつけすぎて、開けたら番号もはがれて消えてしまったという知人もいる。
 世帯単位でなされているために、いわゆる暴力夫が、別居中の妻や子どもの番号を知ってしまうという不安が、ドメスティック・バイオレンスにとりくむ人たちのなかから上がっている。世帯単位で通知をすること自体、「個人のプライバシー」をまったく考えていないことを表しているのではないだろうか。
 住民基本台帳ネットワークシステムのまず第一の問題点は、情報の集積化である。住基ネットは、国サーバの下に都道府県サーバ、さらにその下に市区町村サーバがぶらさがるという巨大な一極集中ネットワークであり、かつ全国共通の本人確認をおこなうためのネットワークである。そして、住基コードさえあれば、その人の九十三とも二百ともいわれる個人の情報がサッと取り出せるということである。
 第二に、情報が悪用される危険性が大きいということである。必ずもれる。まず、自治体と自治体を結ぶネットワークの回線は、専用回線ではない。つまり、一般回線も接続されるので、ハッカーなどがより容易に接近できる。次に、入力する人間とメンテナンス(維持)する人間がいる以上、もれる可能性がある。民間委託しているところも多い。私の事務所には、かつて、そして現在、現場で働いている公務員の人からメールなどの連絡がくる。「必ずもれる」と書かれている。だから危険であると。夜間や休憩中など人のいないときに、端末を動かして知ることができるのではないかと。すさまじい人権侵害が起きる。  個人情報保護法(正確には、行政情報個人情報保護法になろうが)がないかぎり、住基ネットは許されない。そんな意見がある。そのとおりである。
 しかし、私は、かりに個人情報保護法ができようが、住基ネットには反対である。
 住基ネットは、根本的に問題があるのではないか。
 まず第一に、国民一人ひとりを識別し、区分けしているからである。部落差別、女性差別、婚外子差別の撤廃を願うのは、「属性」や本人の選びようのないところで、差別をしないでほしいということが大きい。いま、戸籍の続柄欄の婚外子差別をなくしてほしいという裁判の代理人の一人(裁判所に行けないのだが)をしている。一人ひとりをさまざまなファクター(要因)で区分けしていくことは、差別を助長していかないだろうか。性同一性障害の人たちは、さまざまなところにある「男」「女」の区分けに苦しんでいたりする。
 第二に、行政、あえていえば国家権力の側はブラックボックス(真っ暗な箱)で、こちら側は、番号の根拠も実際の仕事も、内部で情報のたらい回しがされていないかもほとんど知ることができない。しかし、あちらからこちらの国民はほんとうによく見ることができる。一人ひとりを監視できる。こんなものはゴメンだと思う。




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