福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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男女平等へのバックラッシュ
〈『部落解放』2002年12月号〉

(2003/01/23up)

 1999年に男女共同参画社会基本法が成立した。男女平等のための基本法ができたことにより、法成立後、各自治体で、男女共同参画条例、男女平等促進条例など、さまざまな名称での条例づくりが非常に活発になった。ドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)の救済について盛り込んだ岡山市の条例や、「男女共同参画推進状況報告」のない事業者は業者登録できないようにしている福岡県福間町の条例もある。基本法はわりと抽象的だったが、各地のバラエティーに富んださまざまな条例は、一歩も二歩も法律より進んでいる。
 内閣府の今年4月現在の調査によると、都道府県35、政令指定都市5、市町村51で、男女平等条例、男女共同参画条例ができている。しかし、問題も生じてきている。まず、第一に、なかなか条例ができない場合が出ていることである。千葉県は、堂本知事が男女共同参画条例をつくろうとしているが、県議会の多くの男性たちが反対。現時点で継続審議になっている。堂本知事が出した条例で唯一通らなかった条例といわれている。長野県の田中知事は、脱ダム宣言で県議会と対立したが、千葉県の堂本知事は、男女平等条例で、というところだろうか。第二の問題は、後退した条例もできていることである。大阪府の場合、前文に「男女が、互いの違いを認め合い」がはいっている。
 各地の自治体の議会での審議をみるとびっくりする。「男は男らしく、女は女らしく」のどこがよくないのか、ゆきすぎたジェンダーフリーは問題である、ジェンダーフリーが家庭を壊す、夫婦別姓は家庭を壊す……といった主張に、である。
 教科書や副読本もターゲットになっている。
 絶版になってしまった副読本がある。『教えて! 聞きたい! 思春期のためのラブ&ボディBOOK』というブックレットである。このブックレットの「避妊について」の項のピルのところが問題となった。コンドームの失敗率は12%、ピルの失敗率は1%とあり、「月経が始まった日から二一日間、毎日一錠ずつ飲むんだけれど、きちんと飲めば避妊効果は抜群」という部分などが批判された。ピルについての意見はいろいろあるけれども、「きちんと飲めば避妊効果は抜群」というのはそのとおりだろう。  「子どもたちにこんなことを教えるなんて」という意見もみられた。しかし、性のこと、避妊のこと、体のことを知り、理解することは大切である。望まない妊娠よりずっといい。
 変な言い方かもしれないけれど、少し前まではあまり問題にならなかったこともターゲットにされると「大問題」になる。このブックレットは回収騒ぎとなり、子どもたちに配布されず、今はもう絶版となって入手することもできなくなった。
 「男女平等に反対」の人たちの言い分も巧妙になっているのではないだろうか。「男女平等は結構です。しかし、男には男の役割、女には女の役割があります」「私たちは男女平等には反対していません。男の特性、女の特性も大事にしようと言っているだけです」と言われると、「そうかな」と思う人もいるのではないか。しかし、「男の役割、女の役割」「男の特性、女の特性」ということは、性別役割分業の考え方ではないだろうか。
 夫婦別姓選択制は、「夫婦別姓は家庭を壊す」と強い反対があったが、男女共同参画社会基本法については反対はなかった。しかし、最近は、男女平等が広がってバッシングが起きているように思う。考えてみれば、男女平等の問題が「周辺」の問題ではなく、メイン・ストリーム化(主流化)してきたのだ。とるに足りない「女の問題」とされてきたのが、「相手」にしなければならないほど力を持ってきたともいえる。
 しかし、他方で思う。男女平等の問題、人権の問題を一人でも多くの人に理解してもらい、また、いろんな人やものを孤立させないように幅広い連帯の運動をつくっていく必要がある。みんなで力をつけて、バックラッシュ(巻き返し)を乗り越えていこうと言いたい。




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