福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

「参議院議員・弁護士 福島みずほのWebsite」はこちら



 

参政権は人間の尊厳の問題
〈『部落解放』2003年3月号〉

(2003/03/03up)

 先日、東京のある作業所に見学に行った。この作業所は、障害者の人が、パソコンを使って仕事をしていた。別の部屋で簿記の勉強をしていた。簿記の検定試験を直前に控えて、追い込みの段階であった。教えている先生は、車いすの人である。
 今度、また、兵庫県に見学に行く予定である。ある女性は、息子さんにハンディキャップがあり、そのことからも就労支援、自立支援のため会社を作った。「ハンディキャップを持つ人」と言わず、「チャレンジド」(チャレンジする人)という言い方もされるようになった。税金でケアしてもらう立場から、なんとか納税者へ。もちろん、みんなが納税者になれるわけはないし、「自立支援」といっても一人ひとりの個人のおかれた状況は、あまりにも違う。しかし、「地域で生きられるように」「在宅で仕事ができるように」「パソコンで生計をたてられるように」といったさまざまな各地の取り組みは、勇気づけられるものである。
 二〇〇二年十一月二十八日、東京地方裁判所でALS選挙権国家賠償請求訴訟の判決が出た。これは、在宅療養中のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者が、選挙権行使の機会を奪われているとして国家賠償などを求めていた裁判である。
 投票所のバリアフリーをもっと進めてほしいという声はよく聞く。もちろんこのことも課題だけれど、投票所に行けない人たちもいる。
 現行公職選挙法上、身体の障害により投票に行くことができない人々のために郵便投票制度が認められている。しかし、郵便投票をするためには、選挙人が投票用紙などに自書することが要件となっていて、代筆は認められていない。このような制度のもとでは、投票所に行くことができず、かつ自分で投票用紙に記載することができない在宅のALS患者は、投票する方法がない。
 裁判所は、現行選挙制度は、原告たちの選挙権行使の機会を奪うもので、違憲状態にあるという画期的な判断を示した。
 裁判所は、郵便投票制度において、不正投票を防止するために自書を要求することには、一定の合理性があるが、自書以外には、選挙人本人の意思にもとづかない不正投票を防止する方法が存在しないことについての立証はない、とした。また、巡回投票制度(選挙管理機関が選挙人の自宅を訪問して投票を行わせる制度)についても、技術的困難があるものの、導入することが不可能とはいえないとしている。
 これから、もっと高齢社会になって、足も動かないし、手も動かない、でももちろん投票はしたいという人たちが増えていくことが予想される。  私自身も将来、同じように「投票したいなあ」と思うこともあるかもしれないのである。考えようによっては、みんなの将来に起こるかもしれないことである。
 投票は、人間の尊厳の問題である。
 できるだけ保障すべきであるというこの判決の考え方に私も賛成だ。
 いま、不正防止や巡回投票制度について、寝たきりの人まで果たして含めるかなど、この判決を受け、どう公選法の改正をすべきか、議論を始めたところである。
 ところで、選挙権の行使は、人間の尊厳の問題であり、プライドの問題であり、選挙権があることで社会に対する関心がまったく違ってくる。現行の公職選挙法は、受刑者に選挙権も被選挙権も与えていない。「人間扱い」していないといえないだろうか。選挙権も奪ってしまうということは、本人にものすごい挫折感、「シャバではないのだ」「社会のなかにはいないのだ」という意識を与えるのではないか。定住外国人の地方参政権の問題ももっと国会で進展されるべきなのである。
 前述した東京地裁の判決が出たり、バリアフリー法ができたりしているが、ホームヘルプ利用時間に「上限」を設けようとする厚生労働省の方針など、逆行する方向も出てきている。
 国連では、障害者のための条約を作る動きが活発で、数年後には、条約ができる可能性もある。この動きと呼応して、障害者差別禁止法を国内で作りたいものである。




「福島みずほの人権いろいろ」index


HOME


JINKEN BOOKは、(株)解放出版社が提供しています。 無断転載を禁じます 。
Copyright (C)Buraku Liberation Publishing House Co.,ltd 2001, All Rights Reserved


E-mail

(株)解放出版社
Phone:06-6581-8542(代表) Fax:06-6581-8552
東京営業所: Phone:03-5213-4771(営業) FAX:03-3230-1600