福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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個人情報のたらい回し
〈『部落解放』2003年7月号〉

(2003/06/18up)

 国会で個人情報保護法案が可決された。
 審議の過程で、警視庁が個人カードを作っている場合があること、それらが流出していること、そして、自衛官の募集のための適齢者情報の収集が大問題となった。
  これはほんとうに問題で、住民票の閲覧という形ではなく、防衛庁から各地方公共団体(市町村)に対して「自衛隊地方連絡部に対する適齢者情報の提供」の依頼が行われ、地方公共団体からこの自衛隊地方連絡部に対して情報提供が行われていたのである。
  住民票の閲覧や謄写という形ではなく、内部で情報を提供できるというのは、おかしい。住民基本台帳法が決めているのとは別のやり方で、住民票の内容がほかに流れているからである。
  企業やほかの役所は、こんなことはできないし、やっていないのだから、おかしさがわかるだろう。
  しかし、私が、ほんとうにショックを受けたのは、本籍や家族、親の勤務先、役職やいろんなものを集めて、募集の際の資料としていたことであり、そのことがなぜ問題かということが、各大臣ともちっともわかっていないことである。
  住民基本台帳法は、氏名、生年月日、性別、住所の四情報しか閲覧を請求できないとしている。しかし、この情報以外に情報提供をしている自治体は五百五十七もあった。
  世帯主、保護者など、筆頭者、続柄、郵便番号、電話番号、自治会などの情報である。ほかにも学校、職業、父兄、親の職業(会社員、公務員、自営業など)もある。静岡県のある町は、親の職業は○○銀行、○○工業、○○製作所等まで情報提供をしている。こういうことがプライバシーの侵害であり、また、身元調査であり、就職差別であるということが、まったくわかっていない。
  自治体がこれらの情報をずーっと提供していたのである。
  就職における部落差別をなくそうという運動などから、いまは履歴書から本籍地を書くところが消え、家族欄もなくなっている。数年前に、文房具屋さんで履歴書をいくつも買ったら、家族欄を書く履歴書もあったけれど。
  弁護士として離婚などのケースを担当すると、「離婚をすると子どもの入学や就職に不利になるのではないか」と心配する人もいる。「家族欄の記載は嫌だ」という人もいる。
  かつて住民票の続柄欄に、婚内子の場合は「長男」「長女」「二男」「二女」、婚外子の場合は「子」と書かれていることは、婚外子に対する差別であるとして裁判で争ったことがある。一九九五年三月一日から、住民票の続柄はすべて「子」となった。
  「『養子』と書かれるのは嫌だ」という声もよく聞いていたので、子どもはみんな「子」となり、差別撤廃への一歩となったと思う。東京高等裁判所は、一九九五年三月末、婚外子についてだけ「子」と書くのは、プライバシー権の侵害であると判決を出した。
  本籍地を書かせて部落差別がより起きるということは、ずーっと指摘されてきたことである。
  「身元調査」についても、「身元調査」をして就職差別をしていくことに対しては、血のにじむような闘いの歴史がある。
  本人の能力とまったく無関係なこと、親の職業や門地、性別などを就職の際に考慮することは、まさに「差別」である。
  国会の質問のなかで、「なぜ親の会社の情報まで提供を求めるのか」ということが当然出た。答弁は、「自宅が留守のときに、親の会社を知っておいたほうがいい」という内容であった。答弁はまったくおかしい。なぜ子どもの就職で、親の会社に行くのか。
  親の職業を書かせることは、「選別」のための資料ではないのか。
  こんな形で、行政の内部で個人情報がたらい回しにされていることは、ほんとうにおかしいし、こんなことは許されてはいけないと思う。
  行政情報と民間の情報のそれぞれについて、今回、個人情報保護法が成立した。プライバシーと人権と個人情報保護の観点からもっとチェック、監視していく必要がある。




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