福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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難民認定された日本人女性
〈『部落解放』2003年9月号〉

(2003/08/19up)

 七月八日、国連の女性差別撤廃委員会で、九年ぶりに日本のレポートが審議された。私は、残念ながら出席できなかったので、代わりに秘書に行ってもらった。
 男女共同参画社会基本法について、人権擁護法案について、政治参加について、雇用、教育、保育について、児童買春や人身売買について、マイノリティ女性について、民法改正について、選択議定書の批准についてなど実に多岐にわたって議論されている。
 マイノリティ女性については、統計がきちんと出ていないではないか、アイヌ・部落・沖縄・在日コリアンの女性たちは、教育や雇用の面でどのような状況におかれているのか、マイノリティ女性への暴力はどのようなものがあるかなど女性一般ではなくマイノリティ女性の人権状況が大きなテーマとして議論されている。
 選択議定書の批准をはじめ、これから実現したいこと、やらなければならないことは一杯ある。
 ところで、この女性差別撤廃委員会で議論されたことの重要なことの一つに、民法改正、つまり、選択的夫婦別姓の導入と婚外子差別撤廃がある。
 国会のなかでこれがなかなか進まないのだ。
 今国会で少子化社会対策基本法が成立し、「子どもを生め、生め」というのが強まっているのに、婚外子は、ちっとも歓迎されていないのだ。
 興味深い事例を見つけた。
 日本人の、結婚届を出さないで子どもを生んだいわゆるシングルマザーの女の人が、オーストラリアで、一九九七年九月二十五日に、日本で婚外子を持ってシングルマザーで生きることは社会的迫害を受けるとして、なんと難民認定されたのだ。これは、五十年前のことではなく、つい最近のことなのである。
 決定文を読むと、「日本の社会のなかには“いじめ”があり、子どももいじめられる可能性がある」としている。
 難民認定を受けた女性は、実の父親に「うちの恥だ」と言われたり、殴られたりした。また、会社の上司には、「こんな会社に雇ってもらうだけでありがたいと思え」と言われ、とりたい休みをとれなかったのである。
 彼女は、家のなかでも職場のなかでも辛いめにあっている。彼女がオーストラリアに行きたかった理由もよくわかる。
 ところで、と思う。
 こんな女の人は、日本には結構いるのではないか。家のなかや職場で嫌みを言われたり、冷遇されたりする女の人は一杯いる。
  「未婚の母になったことで、自分の実家に行くのも夜にしかできず、近所の人の眼を気にする実家に気がねをしている」と語ってくれた女性もいる。
  オーストラリアの政府は、申請者の女性の境遇に驚いて、難民認定したのだろうけれど、この基準でいくと、難民認定を受ける日本人の女性は、ものすごい数になるだろう。みんななんらかの「社会的迫害」を受けているよ。
  外国に行きたいと思う女性や若い人の気持ちも理解できる。
  日本に眼を転ずれば、住民票の続柄欄は、「子」に変わったけれども、戸籍の続柄欄における差別は残っている。婚内子は、「長男、長女、二男、二女」と書かれるのに対し、婚外子は、「男」「女」としか書かれない。このような差別的記載をなくしても何も困らないのだ。もっと言うと、「家督相続制」はなくなっているのだから、「長男」か「長女」か「二男」か「二女」を区別する必要もないのである。「長男なんだから」「二男なんだから」というのを区別する法律上の必要性はないのである。
  また、法定相続分の差別(民法九〇〇条四号但書)もまだ変わっていない。婚外子は、婚内子の半分の法定相続分しかないのである。最高裁では、最近では、三対二で合憲となっている。子どもに責任のない生まれながらの差別が、民法にきちんと書かれていることは、変えたいものである。ところで、読者のあなたも、オーストラリアでは、「難民」と認定されるかもしれません。  




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