福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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バックラッシュに立ち向かう
〈『部落解放』2004年1月号〉

 

 人権の問題は、進んでいるのだろうか、後退しているのだろうか。時々、奇妙な感覚にさらされる。
 差別撤廃運動など、遅々として「進んでいる」ように思える。しかし、他方、住民基本台帳ネットワークシステムや監視カメラの存在など、監視・管理社会はどんどん進んでいっている。戦争やテロはやまないし、グローバリゼーションのなかで、振り落とされる人たちは増えている。社会は、良くなっているのか、悪くなっているのか……。
 男女平等についても同じような感慨を持つ。たしかに、二十年、五十年、百年単位で見れば「進んで」きた。ここ二十年くらいを考えても、一九八五年に男女雇用機会均等法が成立し、九五年には育児・介護休業法が成立し、九九年に男女共同参画社会基本法ができ、二〇〇一年にはドメスティック・バイオレンス防止法が成立した。
 他方、男女平等に対するバックラッシュが起きている。
 選択的夫婦別姓が家族を崩壊させるといった批判、税制や年金制度の改革への反対、ジェンダーフリーへの批判は、東京女性財団への批判となり、財団はつぶされてしまった。いわゆる「従軍慰安婦」問題への批判、混合名簿をはじめとしたジェンダーフリー教育への批判も続いた。
 そして、今、各地で男女平等条例をめぐる取り組み、つまり、地方議会に働きかけて、男女平等条例、男女共同参画条例などを換骨奪胎する動きなどが強まっている。また、「ラブ・アンド・ボディ」という小冊子の回収の動き(ピルを採り上げていることなどが抗議の対象となった)に見られるように、具体的な抗議活動も起きている。
 私が本当に驚いたのは、鹿児島県議会で「ジェンダーフリー教育反対」の陳情が採択されたことである。
 そして問題なのは、採択された陳情と一般質問で「極端なジェンダーフリー教育」として挙げられた全国の事例が、実は存在しているのかという点である。南日本新聞(二〇〇三年八月五日付)は、一般質問で挙げられた事例として、@川崎市、福岡県の高校で体育の時間など男女が一緒の更衣室で着替えさせられた、A東京・国立の高校は修学旅行で男女が一緒の部屋で宿泊させられた、B川崎市の公立中で男女一緒に身体検査を受けさせられたなどを示し、これらについて、本当に存在しているのかを検証している。結論として、そうした事実をはっきり把握できないということである。そのようなことが客観的にあると断定できないのである。
 そして、そもそもこのような事例と男女平等とどういう関係があるのだろうか。人権という観点からすれば、男女別の更衣室など当たり前のことである。ジェンダーフリー教育だから更衣室が一緒になったという説明は、本当におかしい。
 きちんと検証されないまま、「ジェンダーフリー教育反対」の陳情が採択されることも問題である。
 ところで、バックラッシュも巧妙になってきている。「私たちは、男女平等に反対していません。しかし、男らしく、女らしくということは、必要ではないですか」と言われたら、あなたは、このことに賛成ですか、反対ですか。
 「男らしく」「女らしく」といった性別役割分業をこそ問題にしてきたのに、多くの人に、前述の問いは「そうだよなあ」と思われてしまうのではないかと危惧する。「男らしさ」「女らしさ」の定義など、そもそもできないのだ。
 ナチス・ドイツは、女性解放運動を弾圧し、「母性神話」を築きあげ、戦争に利用した。また、レーガン大統領などは、七〇年代のフェミニズムの成果への財政的・イデオロギー的攻撃を行なった。
 家制度の復活といったことが、国会の憲法調査会で語られる今、バックラッシュに対して、手をつないで反撃していくしかないと考える。




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