福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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刑務所改革の“はじめの一歩”に
〈『部落解放』2004年2月号〉

 

 二〇〇三年十二月二十二日、「行刑改革会議の提言」がなされた。
 今回の行刑改革、つまり、刑務所の改革の問題は、二人の死者と一人の重傷者を出した名古屋刑務所事件をきっかけとして始められたものである。
 この間、たとえば、国会のなかにおいても、この十年間の死亡帳を提出してもらい、そのなかでも二百以上のケースについて、カルテや報告書を出してもらい、それらのケースについても洗い直していくという作業を行った。もちろん多くの人の力を借りて、多くの人たちと一緒にである。
 これまでほとんど光のあたることのなかった刑務所のなかの問題に、初めてといっていいくらい光があたったのではないだろうか。
 しかし、これからがむしろ正念場である。
 本当の意味での行刑改革がなされるよう、みんなでチェックをし、刑務所を変えていこうと呼びかけたい。
 ところで、今回、初めて、受刑者と刑務官、刑務所の医師に対するアンケートが実施された。アンケートの結果は重要であり、受刑者、刑務官、刑務所の医師にとってもいい改革となるべきである。
 提言は、受刑者の人権を保障し、刑務官の労働条件を向上させることは、受刑者の社会復帰と犯罪の防止につながり、ひいては国民社会全体の利益の向上に資するものとしている。これは、そのとおりではないだろうか。日本で行われる「改革」は、「改革」「改革」といいながら「改悪」であることが多いので、刑務所の改革が「改悪」になっていかないよう、これからみんなでがんばっていくしかない。
 提言のうち、「軍隊式」行進や居室での正座強制などの見直し、外出制度、友人・知人との面会、土・日曜日の面会、電話の使用、「刑事施設視察委員会」の設置などを求めていることは一歩前進だろう。
 今まで、家族と弁護士以外は、原則として面会や文通をさせず、土・日曜日の面会はなく、電話の使用など夢のまた夢で一切認められず、居室での正座が強制され、まだまだ「軍隊式」行進をさせる刑務所だって存在してきたのである。今まであまりに「異常」だったといえるのではないだろうか。
 ただ、たとえば、電話の使用は、「まず開放処遇を受けているものから認める」など、限定的にしか認めていないので、改革が進むように提言をしていく必要があろう。
 同様に、外部交通の拡大には「受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰に有益な場合」との留保がつけられており、結局、ケース・バイ・ケースの適用であれば、今とあまり変わらないということも生じ得る。
 また、賃金制の導入は見送られており、さらに、一番不満が多いともいえる医療の問題については、厚生労働省移管が将来の課題とされている。医療を法務省のみでやろうとすれば、どんなにお金をかけても医師はキャリアが切断したりするので、刑務所医療をやりたがらず、医療が不十分かつ旧式で、かつ刑務所の施設のなかだけでやろうとするので、手遅れになったりするのである。厚生労働省に移すということは、外部の総合病院(私立でも公立でもよい)の出張所が各刑務所に設備されるということである。医師にとってもキャリアの断絶はなくなる。フランスなどは、厚生労働省への移管によって、悲惨な刑務所医療の問題を改善している。
 また、被収容者の死因確定手続に法医学者が関与すべきであるが、そのことが、提言のなかでは否定されている点も問題である。
 有期刑の上限を二十年から三十年にすべきではないか、との案が浮上しているが、厳罰化していくことで、刑務所の過剰収容が進んでいくだろう。今の、「経済的弱者」を切り捨てていく経済政策こそ問題だと考えるが。
 刑務官にILOの勧告どおり団結権を与えることも刑務所の改革に資するだろう。刑務所改革のためにみんなの力が必要である。




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