福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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憲法が息づく社会へ
〈『部落解放』2004年3月号〉

 

 私は、日本国憲法が大好きである。
 憲法によって励まされ、憲法を根拠に法律や制度が違憲であるとの裁判を、ほかの弁護士と一緒に担当してきた。
 両親が結婚届を出さないで生まれてきた子どもである婚外子の法定相続分が婚内子の法定相続分の半分であると規定した民法は憲法に違反すると主張し、最高裁まで争ったことがある。残念ながら、最高裁は合憲としたけれども。
 住民票の続柄欄において、婚外子と婚内子の表記を差別のないものにしてほしいと訴えた裁判では、東京高裁は、今までの表記は、法の下の平等(憲法一四条)に反し、憲法の規定するプライバシー権を侵害すると判決してくれた。
 憲法は、六法全書に閉じ込められた無味乾燥なものではなく、法律をすら違憲と言うことができるダイナミックなものである。
 そして、それぞれの基本的人権を生かそうとする、基本的人権の侵害などに対して違憲であると主張する多くの憲法訴訟が示すように、じつに多くの人たちが、憲法を根拠に今の法制度、社会を変えようと努力してきている。
 私は、「憲法九条と現実の間に乖離があるから、憲法が現実に合致するように憲法を変えるべきだ」という主張は、本当におかしいと思う。
 憲法は努力目標であり、獲得目標である。
 憲法は、法の下の平等を規定しているけれども、現実にはそうなっていない。学校でも働く場所でも地域でもさまざまな差別が存在している。
 現実と憲法との乖離というのであれば、憲法のさまざまな基本的人権が、現実にちっとも実現されていないことをもっと声をあげて言いたい。
 戦争をしないことを決めた憲法九条と前文は、憲法のなかの宝物である。
 もしこれらが改悪されたら、国会のなかで、なんの歯止めもきかなくなってしまう。
 しかし、今回言いたいことは、憲法九条と前文を改正しなければいいのかということである。
 大分県の日出生台で、市民の人たちが反戦の集会を開いていたら、自衛隊の幹部が、制服のままやってきて、「集会をやめろ」と言ったのである。これは、集会・結社の自由に対する侵害ではないか。
 また、札幌市の公園で、市民の人たちがイラク派兵反対の集会を開くのであれば、自衛隊は雪まつりに協力しないと自衛隊が言ったことで、札幌市が、いきすぎた集会はしないように表明したということも、同じように集会・結社の自由に対する侵害である。
 そして、今回、政府は、自衛隊への取材の禁止、報道機関への自粛要請をし、また、防衛庁は、幕僚長の定例記者会見を廃止してしまった。これでは、報道の自由、国民の知る権利がまったく保障されないことになる。かつての「大本営発表」を思い起こさせる。
 このように、表現の自由、集会・結社の自由をどんどん制限するようなことが進んでいる。
 いわゆる盗聴法反対も含めた組織的犯罪対策三法案反対運動が盛り上がったのは、一九九九年のこと。ほんの少し前だ。しかし、その後、監視カメラの設置、住民基本台帳ネットワークシステムなどが進み、現在、共謀罪の新設、さまざまな電子カードの提案、パスポートに人の顔の電子情報(顔識別機能)を入れて、国民に持たせる……などの取り組みが進んでいる。監視社会、プライバシーの侵害がどんどん進んでいるのである。
 憲法一三条が規定するプライバシー権がどんどん破壊されていっているのを感じる。
 生存権や労働基本権も福祉の切り捨てや労働法制の規制緩和が進み、これまた侵害されつつある。
 憲法九条や前文以外の権利が壊されていっている今、憲法を丸ごと、そして、条文ごとに生かしていくという確認と運動が必要ではないか。
 「論憲」「加憲」「創憲」と言っているうちに、九条や前文も含めて、憲法の各条文が溶解し、浮遊し、地盤沈下し、弱く弱くなってしまうのではないか。「愛国心」の強要だって、思想・良心の自由に対する侵害である。憲法を生かす大きな国民的運動をと言いたい。




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