福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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DV防止法改正案上程へ
〈『部落解放』2004年4月号〉

 

 ドメスティック・バイオレンス防止法(DV防止法)が成立したのは、二〇〇一年。一年かけて検討した改正案を三月に今国会に上程し、成立させる予定である。国会のなかでいちばん楽しいのは、立法。女性への暴力について、国会のなかで立法が進んでいる。
 二〇〇一年に成立したDV防止法のポイントは、第一に、保護命令という新しい制度を導入したことである。「私に接近するな」「家から出ていくように」という命令を裁判所に出してもらい、それに反すると一年以下の懲役になるというものである。第二に、各都道府県にDV防止センターを設置することにした。第三に、国のNGOに対する援助の規定を設けたことである。第四に、教育・啓発の規定なども設けた。
 DV防止法ができたことで、「DVは犯罪である」ということが社会に少しは浸透し、保護命令の申し立て件数も三千件ほどになっている。
 今回の改正案は、DV防止法で弱い点を少しでも改善しようというものである。  まず第一に、保護命令制度の拡充である。
 元夫(もちろん元妻ということもあるのだが)に対して、保護命令の申し立てができるようになった。また、子どもへの接近禁止を求めることもできるようになった。夫が子どもを奪いにくるのではないかと不安や恐怖を感じたり、実際、奪われてしまう例もたくさんある。子どものことが理由で、やむなく家に戻ってしまうこともある。子どもへの接近禁止を求めることができるようになって、改善されることがいっぱいある。
 ただし、家族や友人、支援をする人たちに関する保護命令については、今回は見送られた。家族や友人が、逆恨みをされて殺されてしまう例もある。家族や友人の命を守る必要性はある。このことについては、議論のなかでは、ストーカー行為規制法できちんと対応するということになった。今後のチェックが必要である。
 そして、「家から出ていくように」という退去命令の期間の拡大がある。退去命令の期間を現行の二週間から二カ月に拡大した。そして、やむを得ないような場合は、退去命令の再度の申し立てをすることができるようになった。したがって、二カ月、四カ月、六カ月、八カ月……と再度の申し立てをすることによって、退去命令の期間を長くすることもできるようになった。
 また、夫が退去を命じられたにもかかわらず、退去住居付近をはいかいすることも禁じられるようになった。これは、接近禁止命令と退去命令があわせて発せられた場合に、はいかい禁止も求めることができるのである。
 第二に、被害者の自立支援の明確化である。国や地方公共団体の責務を条文化した。
 第三に、内閣総理大臣などは、施策に関する基本方針を定めることとした。そして、重要なことは、都道府県は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する基本計画を定めなければならないとしたことである。これは、従来、都道府県によって取り組みがデコボコだったので、あまり取り組みがなされない都道府県をなくそうということから、基本計画をつくることを思いきって義務づけたのである。
 第四に、職務関係者は、「その職務を行うに当たり、被害者の心身の状況、その置かれている環境等を踏まえ、被害者の国籍、障害の有無を問わずその人権を尊重するとともに、その安全の確保及び秘密の保持に十分な配慮をしなければならない」という規定を置いたことである。
 外国人や障害のある人たちに対する人権上の配慮の規定が設けられたことは、本当にうれしい。この条文は、当事者の人たちからの強い要求で実現したものである。
 二〇〇三年七月、女性差別撤廃委員会は、日本政府に対し、勧告を出した。そのなかに、複合差別(マイノリティーに属する女性たちが受けている二重の差別)を受けるマイノリティーの人たちについての配慮が盛り込まれた。
 DV防止法改正案のなかに、マイノリティーの女性に対する配慮が盛り込まれたことは、画期的であり、今後、マイノリティーの女性に対する取り組みがあらゆる場面で進むことを期待する。




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