福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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憲法論議にもっと声を
〈『部落解放』2004年9月号〉

 

 テレビの党首討論番組で総理に、「あなたは、憲法九条を集団的自衛権の行使と変えたいと思っていますか」と聞いたところ、答えは、「はい、憲法九条を集団的自衛権の行使と変え、米軍が攻撃を受けたら、自衛隊はともに行動します」というものだった。
 ほんとうに驚いた。
 戦後初めて総理大臣が、憲法九条を集団的自衛権の行使と明文改憲すると答えた瞬間であったからだ。
 自衛隊は合憲か違憲か、日米安保条約は合憲か違憲かという論点がある。
 もちろん大事な論点だけれど、事態はもうそんなところにはないという気がする。
 自衛隊はすでにイラクへ行き、違憲な行為をしている。
 いまの論点ははっきりしていて、憲法を変えて、米軍と自衛隊がともに名実ともに戦争ができる、そのことをつくりだすかどうかである。
 ところで、来年の五月三日に、衆議院の憲法調査会は、最終報告書を出す予定と言われている。そして、自民党は来年の秋に憲法改正案を発表すると言っている。
 どんな社会を私たちがつくっていくのか、ほんとうに問われている。
 憲法九条も前文も大事だが、ほかにもとくに気になるところを述べたい。
 自民党の憲法改正プロジェクトチームの「論点整理(案)」を読んでいると、ギョッとすることに頻繁に出合う。今回は、三点について書きたい。
 まず、第一に、「新憲法は、……現憲法の制定時に占領政策を優先した結果置き去りにされた歴史、伝統、文化に根ざしたわが国固有の価値(すなわち「国柄」)や、日本人が元来有してきた道徳心など健全な常識に基づいたものでなければならない。同時に、日本国、日本人のアイデンティティを憲法の中に見出すことができるものでなければならない」としている点である。
 日本の歴史、伝統、文化に根ざしたわが国固有の価値とはいったい何なのだろうか。どの時代の何をさすかによっても、まったく変わってくる。
 女性差別撤廃条約は、慣習などのなかに差別がはいっていることがあるので、慣習なども差別撤廃の観点から見直す必要があるとしている。部落差別も「歴史」「伝統」「文化」のなかに存在していたこともあったではないか。他の差別も「当たり前」のこととして「偏見」のなかで温存されてきたものも多い。
 このような憲法改正は、差別をなくし、すべての人の人権を確立しようという動きをとどめることにならないだろうか。
 第二に、生存権(憲法二五条)の規定について、社会連帯、共助の観点から社会保障制度を支える義務・責務のような規定を置くべきであるとしている点である。
 生存権を規定した二五条は、すべての人が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するとし、国が社会保障などについて責務を負うことを規定している。ここから生活保護法をはじめ多くの立法が出てきている。
 それを国民の義務や責務にすりかえてしまったら、国の責任がうすれていってしまう。「自己責任」「義務」となれば、本来、国民が生存権を持つという意味、重要性が失われていくと考える。
 第三に、「婚姻・家族における両性平等の規定(現憲法二四条)は、家族や共同体の価値を重視する観点から見直すべきである」としていることである。
 家族における男女平等の規定は、大好きな規定である。戦前までの民法やさまざまな規定を憲法二四条は変えたのに、なぜ見直すのか。
 教育基本法の改悪法案で、「国を愛する心」を書くとも言われている。教育基本法改悪と憲法二四条の改悪によって、「国家とオレを愛せ」「国家を愛し、オレを尊敬せよ」とならないだろうか。
 憲法論議は、とんでもないところまで広がっている。私たちの生活そのものを決める論議であり、もっと声をあげていきましょう。




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