福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

「参議院議員・弁護士 福島みずほのWebsite」はこちら



 

ねらわれている憲法24条・25条
〈『部落解放』2004年11月号〉

 

 憲法改正といったときに、もちろんターゲットは、戦争をしないことを定めた憲法九条と前文である。しかし、憲法改正をしたいと考えている人たちのターゲットは、それだけにとどまらない。
 自民党の憲法改正プロジェクトチームが六月十日に発表した「論点整理(案)」は、さまざまな論点を挙げているが、私がいちばん問題があると思うのは、生存権を規定した二五条と家族生活における個人の尊厳と両性の平等を規定した二四条の見直しが掲げられていることである。
 二五条は、一項で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定し、二項は「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定している。一項は、国民の生存権を規定し、二項は、はっきりと国の責任を規定している。だからこそ、生活保護法などの法律ができてきたのだ。これを権利でなく国民の義務にすりかえようという動きがある。
 社会保険労務士の人たちと話をしていたら、「憲法二五条が改正されないようにしてください。ボクたちの仕事は、憲法二五条からできているのですから」と言われたっけ。
 そして、大問題なのが、二四条の見直しである。私は、二四条が大好きである。この二四条の草案を作成した元GHQ民政局調査専門官ベアテ・シロタ・ゴードンさんが、二〇〇〇年五月二日、参議院の憲法調査会で、憲法二四条ができていく過程について話をしてくれた。
 家族生活における個人の尊厳と両性の平等の規定は、多くの日本の女性を解放したと思う。
 「憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律……は、その効力を有しない。」(憲法九八条)そこで、憲法二四条ができたために、憲法に反する民法のなかの「親族編・相続編」の部分は、戦後すぐ改正された。
 旧民法の規定を見ると驚くことばかりである。
 まず、第一に、強固な「家制度」がある。明治民法の下では、すべての国民は、どこかの「家」という集団に属していた。結婚は、家と家の結婚であった。結婚するには、両家の戸主の同意が必要であったし、戸主または法律上将来家督相続人になるとされている人は、他家に入る結婚はできなかった。相続の場合も、家督相続制、長男単独相続である。
 第二に、男女不平等である。
 明治民法一四条は、妻は法律上「無能力者」であると規定していた。夫は妻の財産を管理し、その収益権をもった。子どもの親権者は、父親であった。また、姦通罪の規定も男女不平等であった。
 憲法二四条ができて、民法の「親族編・相続編」が全面改正されたわけだから、最高法規としての憲法の規定は、ほんとうに重要である。
 自民党の「見直し」論の基調となっているのは、「個人の権利、尊厳よりも、家族・共同体・国家への奉仕が優先されるべき」という意識である。
 出席議員の発言には、「いまの日本国憲法を見ておりますと、あまりにも個人が優先しすぎで、公というものがないがしろになってきている。個人優先、家族を無視する、そして地域社会とか国家というものを考えないような日本人になってきたことを非常に憂えている。夫婦別姓が出てくるような日本になったということは大変情けないことで、家族が基本、家族を大切にして、家庭と家族を守っていくことが、この国を安泰に導いていくもとなんだということを、しっかりと憲法でも位置づけてもらわなければならない。」「女性の家庭をよくしようというその気持ちが日本の国をこれまでまじめに支えてきた」といった発言などが続く。
 個人の尊厳、男女平等ということに重きを置かず、「家族こそが国家の基本」ということが強調されている。大変だ!  ナチス・ドイツが女性解放運動を弾圧して「母性主義」や「家族」を礼賛し、戦争遂行体制をつくったことは有名な話。ジェンダー・バッシングと二四条改正論議、そして憲法九条改正はつながっている。




「福島みずほの人権いろいろ」index


HOME


JINKEN BOOKは、(株)解放出版社が提供しています。 無断転載を禁じます 。
Copyright (C)Buraku Liberation Publishing House Co.,ltd 2001, All Rights Reserved


E-mail

(株)解放出版社
Phone:06-6581-8542(代表) Fax:06-6581-8552
東京営業所: Phone:03-5213-4771(営業) FAX:03-3230-1600