福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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戸籍の婚外子差別
〈『部落解放』2004年12月号〉

 

 差別をなくしたい、とりわけ生まれながらの差別をなくしたいという思いは、ほんとうに強い。人は、自分が生まれてくる状況や環境など選べないからだ。だれも自分の親を、地域を、民族を、国を選べない。
 私は、名前を変えたくない、夫婦別姓にしたいなどの考えから、結婚届を出さずにきた。子どもを産むときにほんとうに悩んだけれども、結婚届を出さなかった。子どもは、法律上は非嫡出子、あるいは婚外子という立場だ。子どもが生まれたときに、心から法制度上の差別をなくしたいと思ったものだ。なくなったものもあるが、まだ、なくならないものもある。
 まず、住民票の続柄欄の差別をなくしてほしいという裁判の途中で、一九九五年、当時の自治省が通達を出し、それまで婚内子(両親が結婚届を出して生まれてきた子ども)は「長男」「長女」「二女」……と書かれていたのに対し、婚外子は「子」と書かれていたことが、すべて「子」に変わった。養子や特別養子も含めてすべて「子」と書かれても何も支障は生じていないのである。
 ところで、戸籍については、婚内子は「長男」「長女」「二男」「二女」と書かれるのに対し、婚外子は「男」「女」と書かれている。
 これらは子どもに対する差別であるとして、現在、裁判で争われている。私も実働はなかなかできないのだが、代理人になっている。何回か法廷に出席した。
 この裁判の判決が、二〇〇四年三月二日に出された。裁判所は、婚外子に対する戸籍の続柄欄差別記載は「プライバシーの侵害」と認定した。しかし、「これまで違法との判例はないので違法性はない」と棄却してしまった。
 プライバシー侵害だけでなく、人格権侵害であり、法の下の平等に反するのだけれど。  現在、この裁判は東京高等裁判所に係属中であり、もうすぐ結審し、判決が出る予定である。
 住民票の続柄欄の記載も戸籍の続柄欄の記載も大したことないという意見もあるかもしれない。
 しかし、戸籍の表記によってすさまじい部落差別が生じたことを考えても、表記は重要である。差別的な記載は、書かれるべきではないのである。また、そもそも法制度に差別があってはいけないのである。
 それでは、戸籍の続柄欄は、どうあるべきだろうか。法の下の平等にのっとって書かれるべきである。私は、「男」「女」と書いたほうがよくて、「長男」「長女」はやめるべきだと思う。
 法律上、「長男」「二男」を区別する必要性はまったくない。そもそも「長男」か「二男」かという序列のつけ方は、必要だろうか。社会のなかで、「長男」「二男」という言い方がある程度、定着していることはあるだろう。しかし、いまはもう家督相続制はなくなっているので、法制度上は、「長男」か「二男」かを区別する必要はないのである。
 住民票の続柄欄をすべて「子」としても、実務上まったく支障が生じなかったように、戸籍の続柄欄をすべて「男」「女」としても、実務上なんの問題も生じないのである(性別欄の記載も必要かどうか議論があるところだろうが)。
 ところが、法務省は、判決を受けて、婚外子の続柄欄の記載を「男」「女」式から「長男」「長女」式に変更し、かつ、婚外子が自ら役所に出向いて、書き直してもらうという案を発表している。
 私の子どもは婚外子なので、「あなたは、いま、戸籍上『女』と書かれているけれども、『長女』と書いてもらうように役所に行きなさい」と言わなくてはいけなくなる。婚外子は、みんなそうしなくてはいけなくなる。
 私は思う。自分が婚外子だと知らない人もいるのではないか。また、地元の役場に行って「私は婚外子ですから」と言うことがどうしてもできないという人も多くいると思う。そして、役場によっては、その場で心的苦痛や差別を受けるのではないか。
 差別をなくす方向に制度が動くのではなく、婚外子にとって厳しい結果になることは許せない!と思う。なんとか変えたいものである。




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