福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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マンデート難民の強制送還
〈『部落解放』2005年3月号〉

 

 法務省は、一月、国連の難民高等弁務官事務所(UNHCR)がマンデート難民と認定したクルド人の親子二人をトルコへ強制送還した。
 国連の難民条約を批准しながら、UNHCRが認定した難民を強制送還した初めてのケースである。なぜこんなことができるのだろうか。
 法務省は、日本の裁判所で「難民ではない」と確定したのだから、UNHCRの判断とは別に、本国に送還しても何も問題はないと言う。
 しかし、日本は難民条約を批准している。UNHCRは、一九五〇年の国連総会決議にもとづいて日本を含む国連加盟国によって設立された難民を保護する専門機関である。したがって、その決議によって採択された事務所規定にもとづき難民保護の任務(マンデート)を果たしている機関が認定した難民を送還するというのは、国連の精神を踏みにじっているし、難民条約の趣旨にも反している。
 そして、親子二人が強制送還される一方、妻ともう一人の息子、三人の娘は日本に残されている。家族がバラバラになっている。
 家族がバラバラになることについて、法務省は平気なのだろうか。配慮しないのだろうか。
 いま日本にいる二十数人のマンデート難民の人たちは、次は自分たちが強制送還されるのではないかと、おびえている。
 日本ではいま、フィリピンなどからヘルパーさんを入れよう、看護師の人たちを入れようという議論が起き、話が進んでいる。
 「外国人」の受け入れに積極的なようだが、現場から聞こえてくるのは、まったく正反対の訴えである。
 とくに、「不法就労外国人」の数を激減させるという政府の方針が打ち出されてから、たとえ家族がバラバラになったとしても強制送還するという傾向は強くなっていると感じる。
 ほんとうに、日本で、人権が大切にされているだろうか。
 日本のUNHCRに対する拠出金は、国別では世界二位である。
 しかし、日本において、難民認定された人の数は、驚くほど少ない。
 以前は、一年間に数人という状態だった。
 いまは少し増え、二〇〇二年度は十四人、二〇〇三年度は十人となっている。依然としてとてつもなく低い。
 ところで、トルコのなかにおいて、クルド人に対する人権侵害のケースは、後を絶たない。ヨーロッパの多くの国は、クルド系トルコ人を難民として数多く受け入れている。
 しかし、である。
 日本において、クルド系トルコ人は、ただの一人も難民として認定されていない。ゼロなのである。  まったく不思議である。
 以前、外務省に対して、質問をしたことがある。
 「なぜ一人もいないのか」
 「トルコにおいて、クルド人難民問題は存在しない」というのが答えだった。「なぜなら、クルド人で国会議員になっている人もいる」と。
 びっくりした。
 ならば、聞きたい。日本において、女性の国会議員がいるから、日本には、女性差別はないのか。松岡徹さんという国会議員がいるから、日本には、部落差別は存在しないのか。ハンディキャップのある人が国会議員にいるから、日本には、障害者差別は存在しないのか。
 まったく変な理屈である。
 トルコ政府との友好関係を害したくないから、クルド難民問題を認めないのだという見方もある。もしそうだとすると、人権ではなく外交が優先されているのだ。
 難民認定を求めながら、外国人収容センターに長期に収容されていた人、収容された夫に面会するために小さな子どもを連れて涙ながらに訴えていた女性、いろんな人の顔が浮かんでくる。
 間違いなく日本の外国人政策、難民政策は転換されるべきである。




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