福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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人権救済機関設置へ全力を
〈『部落解放』2005年6月号〉

 

 人権救済機関をつくるべく全力を挙げようと心から言いたい。
 裁判とは別に、迅速かつ的確な救済がなされる必要がある。裁判だけではダメなのである。だからこそ国連は各国に対し、人権救済機関をつくるよう働きかけ、規約人権委員会は、日本政府に対しても人権救済機関をつくるよう勧告している。
 ところで、人権擁護法案は、@メディア規制があること、A法務省の外局に設置するとしていることなどから問題があるとされてきた。
 それは、そのとおりである。
 ところが、いま驚くべき事態が発生している。
 この人権擁護法案を「人権バッシング」ともいうべき立場から批判する声である。
 自民党の部会で「人権擁護委員の選考が不透明で、国籍条項もない。朝鮮総連関係者も選任されるのか」という意見が出たとの新聞報道に心底驚いた。
 当たり前だが、人権侵害救済法は、人権の侵害を救済する法律であり、人権に国籍はない。
 日本は、人種差別撤廃条約を批准している。
 これから人権侵害救済法をつくるというときに、「国籍要件」を課すということはほんとうにおかしい。人種や性別などによる差別をなくそうというときに、わざわざ「国籍要件」を課すことは法律上も矛盾している。
 また、議論の過程で「日本と国交のない国の人は、委員になれないとしたらどうか」という意見が出たとの新聞報道にもこれまた驚いた。
 在日の人たちは、韓国籍か朝鮮籍かであり、北朝鮮籍という人は存在しない。韓国籍だから北朝鮮といっさい関係ないというわけでもない。
 また、そもそも「外国人はダメ」とすることは問題だが、さらに、「一般的に外国人はOKだが、北朝鮮の人(そういう言い方も変だが)はダメ」とすることは、より差別を厳しくしている。
 この「国籍条項」のほかに、「人権侵害」の定義、人権委員会の権限も論点になっている。
 私がいちばん危惧するのは、人権救済は裁判でやればよくて、そもそも人権救済機関は必要ないという意見も聞かれることである。
 アジアだけをとっても、フィリピン、インドネシア、韓国などで独立した人権救済機関が設けられている。韓国では、警察や拘置所、刑務所などに対し、アポイントメントなしに調査ができる。韓国では法律ができて、公権力による人権侵害が多く救済されている。
 なぜ日本においてこのような後退した議論になっているのか、ほんとうに不思議である。
 外国人排除の意見の背景に「国家主義の台頭」があるのではないか。
 いままで当然のこととされてきた「平和」や「人権」「基本的人権の尊重」といったことが、バッシングを受けていることが、いまの社会の危機である。人権を踏みにじって国家主義が台頭してきたというと大げさだろうか。
 自民党が二〇〇五年三月に発表した憲法前文改正の中間集約案は、「基本的人権を常に公共の利益のために行使する責任を負う」としている。「常に公共の利益のために行使」される権利は、もう基本的人権とはいわないのではないか。大日本帝国憲法も権利の規定を設けていたが、法律の留保があったため、結果的には、国民の権利は紙くず同然となった。
 自民党の新憲法起草委員会は、四月に要綱を発表した。「国民は夫婦の協力と責任により、自らの家庭を良好に維持しなければならない」「国民は自己の保護下にある子どもを養育する責務を有するとともに、親を敬う精神を尊重しなければならない」とある。
 家族は大事。子どもも親もパートナーも大事。しかし、これは憲法に書くべきことではない。憲法は、国家権力の暴走を食い止めるためのもの。これでは、「国を愛する心を育てる」という教育基本法の改悪法案と同じで、国家権力が国民の心や行動を縛ることになる。まったく変である。離婚したら憲法違反か。仲の悪い夫婦は、違憲状態のカップルか。うちは護憲の家族ですと言うのか。
 憲法の根本が壊れていくという大変な危機感をもっている。




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