福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

「参議院議員・弁護士 福島みずほのWebsite」はこちら



 

戦後責任を果たすべき
〈『部落解放』2005年7月号〉

 

 今年は、戦争が終わって六十年、ヒロシマ、ナガサキ、沖縄から六十年である。被害者も高齢化している。
 戦後、置き去りにしてきた多くの問題がある。これらの問題を解決していく年にしなければならない。被害者が生きている間に少しでも被害を回復しなければならないと、心から思う。
 ヒロシマ、ナガサキでは、強制連行されてきた朝鮮の人たちなども何万人も被爆した。ところが、来日をしなければ、被爆者健康手帳や各種手当が受けられないようになっている。多くの裁判所は、来日困難な在外被爆者の申請を受理せず、または却下し、来日するまで対処しないことは、不合理な差別で違法であるとし、国に損害賠償の支払いを命じている。高齢で、来日できない人たちを放置していいわけがない。在外公館で、手帳などの申請ができるようにすべきである。
 遺骨の問題もいま、大きく取り組みが始まろうとしている。日本人で遺骨が放置されているという問題もあるけれども、日本の内外での朝鮮の人たちなどの遺骨のうち、かなりの部分が放置されている。調査もなかなか進んでいない。これも大至急とりくむべき課題である。
 ところで、と思う。なぜ、日本に朝鮮の人たちの遺骨が多数存在するのだろうか。遺骨の問題の前には、強制連行などの問題がある。これも日韓などが力を合わせて、真相究明のために努力をすべきである。遺骨は、遺族の気持ちに従い、本来あるべき所に帰されるべきである。
 中国残留の孤児や女性の問題もある。日本に帰ってきても課題が山積している。厚生労働省は、養父母を見舞うために訪中を希望する中国残留孤児の人たちについて、帰国後一度に限り援助していたが、最近、二度目の訪中を行う場合も援助すること、また、養父母の危篤などの事情により緊急を要する場合は、本事業の利用回数にかかわらず優先して援助することを決めた。ほんの少しの前進かもしれないけれども、改善を勝ち取っていきたいと思う。
 ところで、朝鮮人労働者などに対する未払い賃金などが、いまも日本銀行に供託されている。その金額は、供託金と有価証券を合わせて、なんと約二億千五百十四万円にのぼる。いまのお金に換算すると八十三億円以上になるといわれているが、実際はもっと大きいのではないか。戦後、日本政府は通達を出して、さまざまな企業に、朝鮮の人たちなどの働いた賃金を供託すべきであるとした。そのお金が二億円以上、日本銀行に眠っているのである。本来ならば本人に払うべき賃金である。しかし政府に質問しても、名簿の精査が大変であるとしか答えない。これらのお金は、少なくとも日本が持っておくべきお金ではない。それだけははっきりしている。政府は「特段の措置を採ることは考えておらず、その保管を継続することとしている」と答弁している。それは変だ。繰り返すが、日本が未来永劫持っておくべきお金ではない。
 「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」を野党で提出している。かつて審議入りをしたことがあるが、今回ももっと審議をし、何としても成立にこぎつけたいものだ。
 シベリア抑留問題もひどい話である。南方で捕虜になり帰還した人には、本来は抑留国が行うべき捕虜に対する支払いをわが国が立て替えるとの認識のもとに、労働賃金の支払いが行われている。しかし、シベリアから帰還した捕虜にはその支払いが行われていない。どこに出征・動員されるかは、本人は選べないことなのに。明らかに差別的な取り扱いが生じている。
 ほかにも、旧日本軍のBC級戦犯問題、化学兵器、毒ガス問題など、数多くの問題がある。
 多くの問題を置き去りにして、封印をして、戦後をやってきたのではないか。いまこそきちんと一つずつ解決すべきである。
 戦後責任をきちんと果たすべきだ。そして、最近は思う。これからもう戦争をしないという「戦前責任」としても、これをきちんとやるべきである。当事者たちがいちばん教えてくれたのは、「戦争をするな」ということである。 




「福島みずほの人権いろいろ」index


HOME


JINKEN BOOKは、(株)解放出版社が提供しています。 無断転載を禁じます 。
Copyright (C)Buraku Liberation Publishing House Co.,ltd 2001, All Rights Reserved


E-mail

(株)解放出版社
Phone:06-6581-8542(代表) Fax:06-6581-8552
東京営業所: Phone:03-5213-4771(営業) FAX:03-3230-1600