福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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税金は命を生かすことに使おう
〈『部落解放』2005年8月号〉

 

 父親が骨折をした。体のあちこちが悪くなっている。母親と二人で生活をしていて、母親の親身な看病で、少しずつ家の中で歩いたりできるようになった。介護保険の要介護1であったのが、最近、要介護2となった。
 若いヘルパーさんがお風呂に入れに来てくれるので、母もそのときだけはホッとできる。
 東京で働いている娘である私は、故郷の宮崎に帰れる機会を増やして、できるだけ顔を出すようにすることくらいしかやれていない。
 夫の母親も今、関西で一人暮らしだ。ガンの手術の後、骨折をしたことを乗り越えて、元気にマイペースで生きている。重い物を持つことなどが負担なので、ヘルパーさんが買い物をしてくれることなどがたいへん助かっているようだ。
 子育てと同時に親の介護が問題となる世代となってきた。介護保険には、たいへんお世話になっているという思いがある。「介護の社会化」ということが少しずつなされない限り、高齢者も高齢者の子どもたちも元気に生きていけない。
 国会で介護保険の改正法が成立し、現在、障害者自立支援法案が審議中である。どちらの法案も「応能負担から応益負担へ」ということが進んでいるが、それでいいのだろうか。
 まず介護保険だが、今、特養老人ホームに入っている人は、今年の十月からホテル代、光熱費、飲食費を払うことになった。これらは保険の適用外となったのだ。最低月三万一千円の負担増となる。今、特養老人ホームに入っている人は、これから月に三万一千円余計に払えと言われて、みんな払えるだろうか。激変緩和措置がとられるにしても、ホームから出なくてはならない人たちが出てくる。行き場がない人はどうなるのか。「高齢者難民」が大量に出てくるのではないか。
 要支援、要介護1の人たちについては、筋力トレーニングなどの新予防給付がなされる。現場の人たちが不安に思っているのは、新予防給付では、家事援助がカットされるのではないかということである。家事援助を利用しにくくなって、新予防給付を受けろ、筋力トレーニングをしろと言われたらたまらない。
 国会の答弁では、大臣は、新予防給付の該当者が家事援助を利用できる条件として、@掃除、調理などが「自力で困難」であること、A「同居家族や地域の支えあい」などの代替的な対応ができないことをあげている。
 現場で必要なのに家事援助が利用できなくなるということが起きないように目を光らせていく必要がある。
 それでは、障害者自立支援法案はどうなのだろうか。
 「応能負担から応益負担へ」となったら障害者の人たちはたまったものではない。障害の重い人は、軽い人に比べて、より収入を得にくく、しかも介護がより必要である。
 「応益負担」、つまり「利益」に応じて費用を負担せよとなったら、収入の少ない障害者の人たちは、本当に生きていけない。
 自らも障害者である東大の福島教授は、これでは、障害のある人は刑務所に閉じ込められていて「仮釈放」されるたびに毎日金を払わなくてはならないというようなものだという旨の発言をされている。その通りである。そもそも障害のある人が移動することは、「利益」なのだろうか。
 ところで、今年は、五年ぶりに米軍への思いやり予算を議論する年である。日本は、米軍に対して約二千四百億円もの思いやり予算を払っている。米軍人の居住について、居住費、光熱費など多くのものを負担している。
 特養老人ホームに入っている人が、十月から「居住費、光熱費を払え」と言われるのであれば、米軍に対してこそ「居住費、光熱費を払え」と言うべきではないか。
 「思いやり予算」というけれども、「思いやり」というのは、もっと高齢者、子どもたち、障害のある人たちにこそ発揮されるべきだ。
 軍需産業など命を殺すことに税金を使うべきではなく、命を生かすことにこそ税金を使うべきである。障害のある人たちの国会前座り込みなどが胸に迫ってくる。   




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