福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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触発される韓国
〈『部落解放』2005年9月号〉

 

 今日は、韓国のことを書こう。
 韓国のことがうーんと身近になったのは、一九九一年からである。それまで光州虐殺のドキュメンタリーを見たりという経験はあったが、何十回も行くようになったのは、戦後補償の裁判を弁護士として担当するようになってからである。
 一九九一年夏に、「私は『慰安婦』でした」と証言する女性たちに、ソウルで会った。一九九二年十二月、東京地方裁判所に、韓国在住の、軍人・軍属とされて戦争に行った人たち、遺族の人たち、いわゆる「慰安婦」とされた人たち、六十二人が提訴をした。在日韓国人の宋神道さんの裁判も担当した。裁判は最高裁まで行き、日韓条約で解決済みという残念な結果になったけれど、事実を語ってくれる多くの人たちの勇気やものすごい努力のなかで、さまざまなことが明らかになっていった。
 韓国の独立記念館、パゴダ公園やいろんな所を訪れた。
 正直言って、いつも事実に圧倒され、これまた「自分に何ができるか」自問自答する旅だった。  九州出身の私にとっては、九州は「東京」よりも韓国に近い。人と人との距離が近く、みんな熱く、どこかお節介で親切なのだ。感情もストレートで開けっぴろげだ。女たちはイキがいい。行くと、いつもなつかしい気がする。
 そんな韓国が激動している。かつての男尊女卑もどんどん変わっている。
 韓国や台湾に行くと、「この社会の主人公は自分たちで、自分たちが変わり動くことで、この社会は変わりうるのだ」という確信があることにいちばん感動する。軍事政権に抗して民主化運動をし、民主主義を勝ち取ったという自信などが社会を動かしている。
 日本に欠けているのは、このような確信ではないか。
 韓国には、国家保安法があり、廃止をめぐり攻防戦が繰り広げられている。廃止すべきでないという座り込みデモを先日ソウルで見た。労働法制の規制緩和もなされようとしているし、国民総背番号制もある。
 しかし、日本でなかなか実現しない人権侵害救済法を韓国は成立させた。韓国も当初は、人権委員会を法務省の外局とする法案だったが、NGOの努力で廃案にし、独立した第三者機関にし、拘置所などに予約なしで立ち入り調査ができる法律を成立させ、成果を出している。
 これまた日本でなかなか成立しない民法改正だが、韓国では、戸主制を廃止し、戸籍を個人単位とする改正法案に女性団体がとりくみ、成立させた。
 韓国では、女性省をつくり、日本よりも早く家庭内暴力防止法を成立させた。私自身は、韓国や台湾のほうが法律を先に成立させたことにたいへん触発され、ドメスティック・バイオレンス防止法をみんなで作った。
 死刑廃止などの動きについても韓国の国会のほうが活発だ。司法制度改革についても韓国のほうが先に実現した。
 韓国の与党であるウリ党、野党であるハンナラ党、千年民主党、民主労働党の人たちと交流していると、ずいぶん日本の国会と違っている。朴元大統領の娘さんはいるけれど、二世、三世議員は圧倒的に少ない。民主化を闘ってきた学生の団体の歴代委員長が、八人だっただろうか、議員になっている。党議拘束も弱い。ウリ党の議員は「イラク派兵反対の演説を本会議でしました。百人近く反対が出るようにがんばっています」と言っていた。ウリ党は与党だが、そんなこと関係ないみたいだ。それがいいかどうかは別にして、四十代前半の国会議員が元気。日本の政治の右傾化には、与野党問わず懸念をもっている。
 「オーマイニュース」という韓国のインターネット新聞も活発だ。日本のインターネットの世界の一部が、匿名のかげに隠れた無責任な中傷や差別発言のオンパレード、意地悪、陰湿になっているのと、正直、好対照だ。
 このままでは、日本はアジアのなかでも陥没してしまうぞと私は思っている。韓国などの動きに、がんばるぞと励まされている。 




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