福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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奪われた夢と希望とサムマネー
〈『部落解放』2006年3月号〉

 

 ライブドアの堀江貴文さんが、二〇〇四年に出した本には、こんな言葉がある。「人の心はお金で買える」「女はお金についてきます」
 また、二〇〇五年の総選挙期間中に「公的年金はなくなってもいい」とも講演会で発言している。
 当時、思ったものだ。
 「大金持ちの、大金持ちによる、大金持ちのための政治」「オレってグレイトと思う男の人と、私ってスペシャルと思う女の人たちが政治をやることになる」と。
 竹中大臣は、「郵政民営化、小さな政府づくりは、小泉純一郎、ホリエモン、竹中平蔵でスクラムを組んでやり遂げる」と語っていた。
 虚飾の勝ち組政治が、いま、バラバラとはげ落ちていっているという感じではないだろうか。
 地方の美術館で館長さんに、「いま、東京はおかしくなっていると思いますよ」と話しかけられた。私も地方出身だが、地方に行くと、かつての「名店街」はシャッター通りとなり、道路を車で走ると、大型店舗とパチンコ屋さんとその近くにファミリーレストランしかないという風景が広がる。
 公務員バッシングをし、公務員の削減を言い、「官から民へ」「小さな政府」のスローガンのもと、保育、医療、介護、福祉、交通などの公共サービスをどんどん削ってきている。
 たとえば、横浜市では、公立保育園をある日突然、民営化した。建物も園児も備品もそのまま。先生だけを「全とっかえ」したのだ。小さな子どもにとって、保育園は「家族」のようなもの。おとうさん、おかあさん、おにいちゃん、おねえちゃんが、ある日「全とっかえ」されたようなショックではないだろうか。
 私は、子どもを無認可の保育園にお世話になった。だから、「公立保育園」はよくて、「民間」はダメと言っているのではない。コスト削減のためだけに、人件費を減らすためだけに、いまある「公立」を「私立」に切りかえていることが問題なのである。
 コスト削減で「民営化」して、若い人を短い契約期間でやとい、どんどん切りかえている。「若い人の使い捨て」という感じにもなっている。「民営化」して広がっているのは、「非正規雇用」である。
 小さな子どもたちが少し大きくなって、「先生に会いたいな」と思って保育園に行っても、その先生はいない。「心のよりどころ」のようなものはなくなっていくだろう。
 堀江さんが、「公的年金はなくなってもいい」と言ったことは象徴的だ。
 大金持ちは、おそらく何だってお金で買えるだろう。私は、「人の心はお金では買えないこともある」「女はみんなお金についていくんじゃないよ」と言いたいが、お金で相当なものが買えることは事実だろう。だから、大金持ちは別に「公共サービス」「公的年金」に依存しなくても生きていける。しかし、普通の人は、公共サービスがなければ生きていけない。
 何のために政治があるのか、だれのために政治があるのか。人は何のために、税金や保険料を払うのかということがまさに問われている。
 福祉を削り、公共サービスを削り、福祉は金で買うものだとすることが、夢や希望や安心をたたき壊していっている。
 いま、格差拡大社会が広がっている。数字上もそうだし、暮らしの実感もそうだろう。
 私は、小泉首相が格差は拡大していないと言うのには、ほんとうに驚いてしまった。
 チャップリンの「ライムライト」という映画のなかで、道化師が失意のバレリーナを慰める。  「人生に必要なものは、夢と希望とサムマネー(いくらかのお金)だ」と。  私もこの言葉を聞いて元気が出る。
 首相は、「人生にビッグマネー(大きなお金)は必要ない。サムマネーがあればいい」と言った。これにも驚いた。
 「夢と希望とサムマネーを壊してきたのは、政治じゃないか」
 普通の人が支え合って、希望をもって生きられる社会をつくらなければ、大変なことになる。 




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