福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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指紋蓄積をめざす入管法改定案
〈『部落解放』2006年5月号〉

 

 在日韓国・朝鮮人の人たちが指紋押捺拒否の運動をし、裁判を起こし、最後には、すべての外国人に対する指紋押捺を廃止させたことは記憶に新しい。あんなにがんばって指紋押捺制度を廃止したのに、なんと今国会で審議されている入管法改定案は、十六歳未満と特別永住者などを除くすべての外国人に、指紋や顔写真などのバイオメトリクスデータ(生体情報)の入国時の提供を義務づけている。いま毎年七百万人近い外国人が来日している。この法案が通れば、毎年七百万近くの指紋情報などの生体情報が蓄積されていく。
 「テロリスト」の定義が曖昧なままに、テロリストの恐れがあるという理由で、行政処分ができる。入管法違反といった明確な要件ではなく、予防拘禁し、退去強制ができるのである。
 「外国人を見たらテロリストと思え」「外国人を見たら犯罪者と思え」と、外国人に対する排除や監視がより強まっていく。外国人を「犯罪者予備軍」と見る考え方は、より強まっていく。
 ところで、これは外国人だけの問題だろうか。
 改定案では隠されている問題がある。「自動化ゲート」を導入することにより特別永住者などの外国人に対する上陸審査手続きを簡素化しようというものである。イメージ的には高速道路のETCのようなものだろうか。指紋を登録しておいて、ピッとあてたら照合して改札口が開くという感じだろうか。映画の「マイノリティ・リポート」で指紋で入り口が開くというのをやっていたが、いまや高級マンションや事務所で使われているのを読んだことがある。これについては、別に法務省令を定め、日本人に対しても利用するとしている。
 初めは「行列するよりも便利」と任意で登録をしていたのが、いつの日か「義務化」ということにもなりかねない。
 ところで、外国人であれ、日本人であれ、これらのデータはいつ消去されるのだろうか。
 衆議院の法務委員会では約七十年間保存するというとんでもない答弁がなされた。参議院の予算委員会では「当分の間」という答弁がなされた。
 いまあるデータと照合してその人を入国させないようにはじいていくというよりも、膨大なデータを集積していくことに意味があるのではないか。しかも国会の答弁でも捜査のためにデータを使うことを認めている。
 入管法六一条の九によると、外国入管当局から請求がある場合は、顔写真、指紋データを提出できることになっている。「どういう場合に提供できるか」と聞くと「資する場合」というのが答え。
 膨大なデータをアメリカも日本も保有してどうしていくのだろう。
 結局、世界を行き来する人たちのデータを集積して監視するということ、そして、大事な情報である指紋や顔識別情報などが大量に膨大に行政に保有されていくことが進むのである。それらの情報がどう使われていくのか、まったく不透明である。
 「テロ」という言葉を使えば、大事な情報である指紋や顔識別情報が膨大に集積されていくというのはすさまじい話だ。
 街のなかにいっぱい監視カメラがある。国会のまわりは監視カメラだらけだ。これらの監視カメラと顔識別機能の情報が合わさったら、これまたすごい話になる。一人ひとり特定し、誰がいつどこにいたのか、データが集積していく。ボタンを押せばその人がいた場所がサァーと出てくるという感じになるだろう。東京の霞ヶ関駅では、監視カメラと顔識別機能を連動させることが試験的に行われはじめた。「試験の段階」だけれども、一般化していく日も近いのではないか。
 「犯罪予防のため」「犯罪防止のため」と集積された膨大な顔識別情報が監視カメラと連動していくのではないか。データと合わさっていかなければ意味がないからである。
 国民と外国人を「犯罪予備軍」と見て、監視していく社会の出現である。テロは貧困や紛争を解決することでしかなくならないのに、テロを口実に進んでいく。格差拡大社会と監視社会はつながっているとも思う。
 テロリストを監視すると思っていると、実は監視されるのは私たちなのだ。   




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