福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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教育基本法改悪と愛国心
〈『部落解放』2006年6月号〉

 

 一九九九年、日の丸・君が代国旗・国歌法が成立するときに、当時の野中広務官房長官は、「国として強制したり、あるいは義務化することはございません」「また、国民生活に何ら変化や義務が生じ、影響を与えるものではない」と国会答弁している。
 しかし、成立した途端に、学校現場には、すさまじい強制が起きた。町田市の学校では、音量チェックをしている。こぶし大の手がはいるほど大きく口をあけたかどうかチェックをしているところがある。日の丸に対して「注目」をしなかった先生は調査を受けた。東京都では、学校の卒業式に職員を派遣して調査をし、定時制の学校では、八人中四人が、君が代斉唱のときに着席していたところ、先生が処分を受けた。
 そして、福岡市の小学校では、二〇〇二年、通信表の社会の欄に、「我が国の歴史や伝統を大切にし国を愛する心情をもつとともに、平和を願う世界の中の日本人としての自覚をもとうとする」という評価がはいっていた。声があがったのは、在日韓国・朝鮮人の弁護士が、子どもの通信表を見て驚いたからということを聞いた。たしかに、どうやって「評価」をするのだろうか。
 このことについて、福岡県弁護士会に人権救済の申し立てがなされ、弁護士会は「警告」を行った。結局、このような通信表はなくなった。しかし、この時点でも福岡以外の地域で、愛国心をもっていることを通信表で評価している学校も多く存在していた。
 学校現場は、年々厳しくなっている。
 そんななか、今国会に提出された教育基本法改悪法案が成立するかどうかが大きな問題となっている。
 国旗・国歌法が成立するときに、強制をしないと答弁していたにもかかわらず、学校現場では、年々強制が強化されている。だとしたら、教育基本法に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」と書き込んだら、学校現場はどうなっていくだろうか。
 教育基本法が変わったら、学習指導要領が今以上に変わり、教科書が変わり、授業の内容も変わっていってしまうのではないか。
 「伝統」や「愛国心」といっても漠然としている。いったいどの時代の何をもって「伝統」というのか。「愛国心」も何をさすのか、とてつもなくあやうい。
 私は、日本の四季も自然も大好きである。家族のことも愛している。そして、この社会の行方を心配している。たとえば在日米軍基地の再編の問題やアメリカ産牛肉の輸入再開に反対するのは、そのことによって苦しむ人たちが増えるからである。「そんな社会でいいのか」と思う。それは人々への愛と自分の思いなのだが、それを、別の人は「愛国心」というのかもしれない。
 イラク戦争に賛成をすることは愛国心だろうか。イラク戦争に反対をすることが愛国心なのだろうか。
 「白バラの祈り」という映画のなかで、ナチス・ドイツ政権下で「戦争反対!  この戦争はやめるべきだ」という旨のチラシを配ったミュンヘン大学の学生たちは、国家反逆罪で死刑となり、処刑された。裁判で、裁判官に「ドイツ帝国に対して愛情をもたないのか。国が大変なときに、何という大学生だ。下流人間だ」と罵倒される。
 愛国心がないとして罵倒される社会は、怖い社会である。国の政治に対して批判的精神をもつことは主権者として当然のことなのに、従順な態度を要求されるようになるなんて、とんでもない。
 教育基本法を変えて、愛国心の強制が起きないだろうか。また、評価をどうしていくのだろうか。「国を愛する態度」という場合、態度は、学校の現場でどう評価されるのだろうか。そして、在日韓国人や外国人の人たちは、何をどう評価されるのだろうか。
 国を愛することを示さなければならず、評価され、不利益取り扱いを受けることもありえる。子どもたちの心に「国家」が手をかけていくようで怖い。 




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