福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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だれに対する「思いやり」か
〈『部落解放』2006年7月号〉

 

 在日米軍基地の再編についての日米間の合意が成立した。
 沖縄で、SACO(日米特別行動委員会)合意をして十年たっても、辺野古の沖に政府は杭一本打つことができなかった。住民の人たち、人々の同意が得られない計画は、絶対に失敗する。
 今回の日米合意は、地元の人々の同意を得ていないし、説明すら尽くしていない。その意味で、必ず失敗すると予言したい。
 それにしても、地元の人たちを屈服させるために、原子力発電所の立地と同じ地元振興策を採り、そのための法案を準備していると聞いて、怒りがこみ上げる。振興策としてガバッとお金を払うのではなく、進行に従って交付していくのである。原子力発電所や基地などは、雇用の場がなく産業の育成が進んでいない所を、札ビラで横っつらをひっぱたくようなやり方で建設を推し進めていこうとしている。全国を歩いていると、国内における「南北問題」「地域の格差拡大」を強く感じる。
 ところで、この合意のときに、沖縄海兵隊の一部グアムへの移転費七千百億円を日本が払うことも合意された。在日米軍基地の再編にいったいいくらかかるのだろうか。日米両政府の担当者は、グアムへの移転費も入れて約三兆円と発言した。今の税収は約四十五兆円であるから、いかに多額であるかがわかるだろう。グアムへの移転費七千百億円の多くは、米軍のための住居費や学校を建てる費用にもあてられるといわれている。米軍人の住宅建築費は、一戸平均八千百六十万円になるという試算もある。防衛庁長官は、八千百六十万円は上限であると答弁した。ところで、八千百六十万円で建築するというのは、どういうものだろうか。かなりの豪邸になるし、プール付き、バスがいくつかついた家になるのではといわれている。
 総額で三兆円くらいという大まかな試算はあるのかもしれないが、実は、正式には発表されていない。総理もいくらになると答弁をしていない。逆にいうと、五兆円、六兆円、十兆円となることもあるということである。
 日本は、いま年間約六千億円、米軍に対して負担している。そのうち光熱費や住居費といった思いやり予算が約二千四百億円を占めている。そして今後は思いやり予算を支払いつつ、グアムへの移転費やその他の米軍再編の費用も負担するのである。思いやり予算は、海兵隊の縮減によって減っていくのだろうか。
 国民の税金を使うのに、勝手に約束し、しかも国会や国民に対して説明責任を尽くさなくてもいいのである。まったくおかしい。
 国会のなかでは、福祉の切り捨てや負担増の法律が毎年毎年、成立している。
 二〇〇三年は健康保険法の改悪法案、二〇〇四年は年金の改悪法案、二〇〇五年は介護保険の改悪法案、障害者自立支援法案が成立し、二〇〇六年、いま医療制度改悪法案が議論されている。特養老人ホームにはいっている人は、ホテル代、光熱費、食費を払え、となり、月に約三万円以上の負担増となった。障害者自立支援法は、応益負担として、原則として一割負担せよとなった。「負担せよ」と言われても、障害が重ければ重いほど払えないし、無理だという抗議の声が大きく起こっている。いま議論中の医療制度改悪法案は、高齢者の人は、入院をすると、原則としてホテル代、食費を払えとなるものである。月に三万円から五万円くらい負担増となる。
 特養老人ホームにはいっている人や高齢者で入院している人に、入院代や食費などを払えと言うようになっているのである。これに対して、米軍には住居費や光熱費を日本が負担しているのである。アメリカの防衛費は約四十五兆円である。なぜ大金持ちの国に対して、負担をしつづけるのか。日本の思いやり予算の負担は、他の国に比べてもずば抜けて多い。
 政治がいったいだれのためにあるのかということをつくづく考える。
 政治は、人が涙を流さないためにあると思う。そして、税金は、人が涙を流さなくてすむように、人々を応援するために使われるべきである。
 全国各地での運動と闘いは、これからである。 




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