福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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憲法改悪に直結する国民投票法案
〈『部落解放』2006年8月号〉

 

 秋の臨時国会では、共謀罪(いままで何とか強行採決を免れてきた)、国民投票法案、教育基本法改悪法案が審議される予定である。
 今回は、国民投票法案について一緒に考えよう。
 ついつい国民投票法案と言ってしまうが、これは憲法改悪促進法案である。
 与党案は「日本国憲法の改正手続に関する法律案」、民主党案は「日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案」である。はっきりと「日本国憲法の改正手続についての法律だよ」と言っているのである。
 つまり、二つの法案は、国民投票に関する部分と憲法改正の発議の部分の二つの合体である。
 いわゆる国民投票法案が仮に成立すると、憲法改正原案などの議案の審査などをする憲法審査会が常設機関として衆議院と参議院に設置される。ここで、憲法改正案の起草が具体的に始まっていく。
 だから、「うーん、国民投票法案は、まあ、あってもいいんじゃない。あってもなくてもいいんだったら、作っておいても別に邪魔じゃないし」なんて思っていたら、違うのである。
 法案が成立したら、衆議院と参議院に「憲法審査会」が新たに設置され、そこで憲法改正案づくりが始まってしまうし、この憲法審査会は、何と閉会中もどんどん行うことができると条文ではなっている。そして、この憲法審査会は、憲法改正原案を提出することができる。
 自民党は、去年十月末に「自民党新憲法草案」を出している。戦力の放棄を定めた憲法九条二項を改正することを提案している。最近は、戦争の放棄を定めた憲法九条一項すら変えるべきだという主張が、自民党の議員から出て驚いている。
 私の感じからいえば、ピストルに弾を入れて、ズドンと撃つ直前の感じ。国民投票法案が成立したら、ドアが開いて、後はベルトコンベアで憲法改正へ行く感じ。
 共謀罪も国民投票法案も教育基本法改悪法案も在日米軍基地の再編も、みんな「すべての道はローマに通ず」ではなく「すべての道は憲法改悪に通ず」といえる。そのなかでも国民投票法案は、成立すれば、憲法改正の発議にまで具体的に進行してしまうのだから大変だ。このことを声を大にして言いたい。
 ところで、国民投票は、どのような形で行われるのだろうか。個別の項目ごとか、一括なのか。投票のやり方は、その結果にも大きく影響する。
 与党案でも、民主党案でも、「憲法改正原案の発議に当たっては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする」としている。  ポイントは、「内容において関連する事項」とは何かということである。「内容において関連する」とされれば、限りなく一括投票にされて、どうにでもなりかねない。たとえば、環境権が、基本的人権の制限とともに一括投票に付されることもありえるのだ。
 「国民投票公報」の配布は、与党案、民主党案ともに「国民投票の期日前十日」までに投票人に配布されることになっている。
 「えっ、十日前までに」と思わないだろうか。公報をもとに議論する時間があまりに短い。集団的自衛権の行使、つまり、アメリカの手下となって世界で戦争をすることができるようにするかどうかなどを決定する期間としては、あまりにあまりに短い。
 与党案は、「国及び地方公共団体の公務員等は、その地位を利用して国民投票運動をすることができないものとする」とする。また「教育者の地位利用による国民投票運動禁止」条項をわざわざ設け、「学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位を利用して国民投票運動をすることができない」としている。
 学校で先生が「憲法九条を守るべきだ」「戦争は良くない」と述べることが、この条項に反すると言われる日もやってくるのではないか。少なくとも萎縮的な効果はもたらすだろう。ちっともいいことではない。
 憲法はみんなのもの。憲法改悪手続法案を成立させないために、全力をあげたい。  




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