福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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いじめに何ができるか
〈『部落解放』2007年1月号〉

 

 いじめ、そして、いじめによる自殺が大きく問題になっている。いじめに対して私たちはいったい何ができるだろうか。
 文科省は、一九九九年から七年間、いじめによる自殺はゼロとしてきた。「厭世」や「友人との不和」による自殺はあるとしながら、「いじめによる自殺」などないとされてきたのである。「ある」ものを「ない」とすることなど、まったくの偽装ではないだろうか。あらゆるものにふたをして問題点を見ようとはしてこなかったのである。
 でもここで、子どもが悪い、親が悪い、先生が悪い、教育委員会が悪い、文科省が悪いと、お互いが批判をしあっても仕方がないように思う。子どもたちのいじめによる自殺をなくしたいと、ほとんどの人は思うだろう。だとしたら、少しずつ具体的なことをしようではないか。
 衆議院議員の保坂展人さんを事務局長に、チャイルドライン支援議員連盟が発足した。子どもたちからの電話相談を各地でうける活動をしているチャイルドラインを応援しようという議連である。チャイルドラインは、文科省から補助を受けている所もあるが、相談員の住宅に一回線の電話線を引いている所も多い。一年間に一万件近い着信数がある地域もあるが、実際電話相談に応じることができるのは、着信数全体の一〇分の一である。先日、このチャイルドラインでボランティアをしている人からメールをもらったが、多くの人のがんばりと努力により支えられている。先日は、各国にある子どものためのヘルプラインの三回目の世界大会がスウェーデンで開かれた。
 もっともっと子どもたちのサポートができる所があっていいし、充実させるべきである。
 スウェーデンの社会科の教科書を読んでいたら、あなたがいじめられたり、虐待を受けていたら、次の所に電話をしてくださいという旨の記述があり、赤十字の電話番号が記載されていた。ドメスティック・バイオレンスに対するキャンペーンをイギリスで見たことがある。さらにイタリアでは「青の電話」(子どものためのヘルプライン)が根づいている。各国では子どもたちがアクセスできる番号などのキャンペーンがなされている。
 娘に、「どうしたらいいと思う? 何が問題だと思う?」と聞いてみた。娘は、「子どもたちは、失敗してはいけないと思っている」と答えた。娘の同級生で、不登校になった子どもが退学になって、その後自殺したということを聞いたことがある。「何かできなかったか」と思う。なぜ自殺したかはもちろんわからない。
 大人になり、年をとってゆけば、留年したり、浪人したりしても、そして、何年寄り道しようが、人生にとってどうってことないような気になる。でも、私も子どものころそうだったが、留年や浪人をとてつもないことのように思う。それこそ「人生はいろいろ」で、「失敗なんてないし、生き直せる」と子どもたちが思えるような環境をつくっていくしかない。子どもたちが、「失敗ができない。もう終わりだ」と思わなくてすむ社会を、大人たちが全力でつくっていくしかないのではないか。
 私は、子どものときに、いじめられた記憶もいじめた記憶もない。子どもだから、仲たがいもケンカも、傷つけられる言葉を言われたことも、クラス内の対立もあった。しかし、それは次の瞬間には形を変え、解決していけるものであった。
 ところで、どうだろう。大人になってからのほうが生き辛い。公務員はバッシングされ、討論番組では、多くの場合、多勢に無勢だ。でも、がんばるしかない。有事立法に反対の立場で委員会で質問をしたときは、他党の議員から「日本人か、それで!」と罵声がとんだ。
 多くのマスコミも、そしてネット上も、「弱い部分」「今が旬の弱い部分」を見つけ、思い切ってたたいていく。「向かっていくなら強い部分、大権力に向かっていけ」と思うが、外国人や女性やあまりもの言えぬ公務員、今まで差別されてきた人たちに向かって、笠に着て、かかっていく。日本にはかつて「判官びいき」という「伝統」もあったが、今は「勝ち馬に乗る」ということばかりがされている。子どもの「いじめ」に大人たちが言及できるのか。




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