福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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夕張を希望のシンボルに
〈『部落解放』2007年3月号〉

 

 一月二二日、二三日と北海道の夕張市に行ってきました。テレビでも盛んに報道されている夕張市。学校の統廃合、市立病院の民営化、公衆トイレの廃止まで言われている夕張市。市民の声を直接聞き、見るために行ってきました。
 観光の現場や病院へ行き、お医者さんたちと話をし、学校、学童クラブ、そして高齢者のみなさんの所や老人クラブへも行きました。市役所へ行き、市の職員と市長と意見交換をしました。また、地域のみなさん、交通関係者のみなさんの話もそれぞれ聞きました。
 市役所のある階は、電気がついておらず、トイレも真っ暗で、入る時だけ電気をつけました。七校ある小学校の統廃合で一校になるという決定を、二校、三校にしてほしいという陳情も受けました。子どもたちは遠くから通っています。二校の小学校のなかに学童クラブがあります。学童クラブの先生は、「母子家庭も多く、おかあさんは遅くまで必死で働いている。学童クラブがなくなったり、一つだけになったら、子どもをもって働いている人たちはもっともっと大変になる」と話してくれました。
 市立病院も赤字があるということで廃止になるとされています。民間委託で、規模を縮小して何とか病院を残せないかと現場は努力をしています。しかし、現場の常勤の医師はいま二人で、医師の確保も困難な状況です。透析の患者さんは、遠くの病院に通院することになる予定ですが、雪のなか交通費をかけて、時間をかけて、週に何回も通院することは大変な負担です。
 市長の年収も三〇〇万円台。市の職員の幹部はリストラ、また希望退職者も増えて、市の職員の数も激減していっています。このような状況では、最低限の行政サービスすら困難になっていくのではないでしょうか。
 そのことがまた人口減少に拍車をかけていき、すざまじい悪循環が生まれています。
 成人式で「この夕張に残ってがんばる」と言っていた若い人たちを励ましたいと痛切に思いました。
 夕張市のこれまでの放漫経営はたしかに問題です。しかし、国は夕張市に対し異常に多額の起債を許可し、異常に多額の特別交付税を交付しており、夕張市の財政破綻は国にも責任があります。
 夕張市は、二二あった炭鉱の閉山処理として、住宅、病院、水道、道路などの社会基盤投資に五八八億円(うち起債三三二億円)を要したという事情もあります。そして、交付税削減が二〇〇〇年から二〇〇五年でマイナス七六億円となっています。とくに「三位一体改革」に伴う地方交付税などの削減は二三億円となっています。
 国や道は自分たちの責任を棚上げにして、「見せしめ」的に国や道の言いなりの「全国の最低」を夕張に集中させるやり方はおかしいと思いました。
 「財政再建」、どうやって借金を返していくかはもちろん重要です。しかし、どんどん起債をさせて、今度はギューッと財政を絞って、自治体が倒れていくのを国が「自己責任」として扱うのは公平ではありません。
 また、市民の生活、ナショナルミニマムをどう保障していくかという視点がまったく置き去りにされています。地方の小さな自治体はつぶれても仕方ないと国は本音のところで思っているのではないでしょうか。そんなことを雪の降りしきる夕張で考えていました。
 「市」は残ったが、住民はいなくなった、わずかに引っ越しできない高齢者だけが残ったというのでは、まったくの本末転倒です。
 夕張市を全国の自治体の「見せしめ」にするのではなく、住民のくらしを土台とした再建計画になるよう「財政再建特区」という手法はとれないのか、国による特別交付税などの財政支援は緊急なものとしてできないかということも考えました。
 夕張は、ある意味、日本の地方の自治体の縮図です。だからこそ夕張を「絶望のシンボル」「悲惨のシンボル」ではなく「希望のシンボル」にする必要があります。




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