福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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原発の臨界事故隠し
〈『部落解放』2007年5月号〉

 

 原子力発電所で、臨界事故などの深刻な事故が長期間にわたり完全に隠蔽されていたことが続々と明らかになっている。
 JCOの死亡事故(一九九九年九月)現場にも、美浜の原子力発電所の配管が破裂して死傷者を出した(二〇〇四年八月)現場にも行ったことがある。いままでJCOの臨界事故が日本初の臨界事故といわれてきたが、その三カ月前に石川県の志賀原子力発電所で臨界事故が起きていたことがわかり、その後また福島第一原発で一九七八年一一月に七時間半にもわたって臨界事故になっていたことも明らかになった。
 いままで原子炉の制御棒が一つ脱落することは想定されていたが、福島原発では五本、志賀原発では三本が脱落、まったく想定外の事故が起きている。制御棒が働かなければ、それこそ制御ができず、きわめて危険である。志賀原発、福島原発ともにその結果、臨界事故となっており、一歩間違えれば、スリーマイル島やチェルノブイリの惨事の再現にもなっていたのである。
 それにしてもいちばん驚くのは、すさまじい事故がかくも長期にわたり、完全に隠蔽されていたことである。この「完全犯罪」ぶりにぞっとする。経験や失敗がまったく共有できず、チェックも改善もできない。多くの人の命をまったく軽視している。
 志賀原子力発電所の臨界事故が明らかになって、すぐ現地に行ってみた。話を聞き、資料をもらい、制御室などに行った。
 一九九九年六月一八日の午前二時過ぎに事故が起きたとき、制御室や現場などにあわせて十数名の人がいた。事故があったすぐあと、所長、次長、発電課長、当直長らが集まっている。炉内中性子束モニタの記録は最高値を示し、針が振り切れている。しかしこの記録紙のその個所に「点検」という文字を書き込み、事故を隠蔽したのである。そして驚くべきは「引継日誌」である。いまは二交替であるが、当時は三交替であった。朝八時半に引き継ぐのだが、この引継日誌では、異常は何も起こらなかったことになっている。運転状況の部分は「原子炉停止中」とだけ書かれている。あとの項目には「なし」とだけ記載されている。定期検査中ということで、停止中と説明している。
 まったくの偽造である。この日誌には、次長、課長、当直長の印鑑が押してある。みんなで口裏を合わせて、臨界事故などなかったことにしたのである。データもすべて原本は消去し、一二回も鳴った警報もなかったことにしたのである。
 その素早さと完全さに驚く。
 ところで、もう一つ感じるのは、国の検査制度のまったくの無力さである。国の検査官は、各原発にそれぞれ四人いる。毎日、原子力発電所を訪れ、チェックする。
 一九九九年六月一八日も国の検査官はやってきた。いつものように口頭で「異常なし」と聞き、制御室に向かう。しかし、何時間も前の中性子束の数値を検査官は見ることはできない。直近の数値しか現場では見られないのである。この中性子束のデータを記録するロール紙は、半月ごとに替えられるが、過去のデータを見るのは現場の人間である。「完全犯罪」を見抜くこともチェックすることもできないのである。いったい何をやっているのだろう。
 福島原発も同様である。事故の報告をせず、完全に隠すことができるのである。
 臨界事故をなかったことにすることもできるし、チェックもできない。もちろん、県や市と協定を結んでいても報告などしない。ごく一部の人たちで、口をつぐみ、歴史のなかに隠していくのである。
 今回ようやく表に出てきた。しかし、これらは、たとえば志賀原発では、一人の人間が「こんなことがあったようだ」とアンケートに書いたことがきっかけである。表に出てきたことも偶然ともいえる。この人が書かなかったら、まったく表に出てこず、歴史はまったくウソのものになっていたのである。
 他の原子力発電所に隠蔽されているものはないのだろうか。世界のなかで隠されているものがあるのではないだろうか。
 長期にわたり多大な被害を生む原子力の事故。こんな形で隠蔽しつくすことに怒りしか感じない。原子力をやる資格などないと言いたい。




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