福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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イラク派兵に違憲判決
〈『部落解放』2008年6月号〉

 

 四月一七日、名古屋高等裁判所で、自衛隊のイラク派遣は違憲とする判決が出た。画期的で、記念碑的な、歴史的な判決である。私のまわりの原告たちは、ほんとうに喜んでいる。名古屋在住の平山さんと電話で話をした。「二週間に一度、駅前でイラク派兵違憲訴訟について、街頭演説をしつづけてきたんですよ」。原告団の一人である平山さんは、ほんとうにうれしそうに、興奮して話してくれた。ずーっと街頭演説をしつづけた原告たちにほんとうに感心する。イラクを攻撃するな、イラクの戦争に日本は加担するなと、実に多くの人たちが集会に集まり、デモやパレードを続けてきた。裁判は名古屋以外でも提訴され、名古屋の裁判も原告三〇〇〇人である。
 みんなの思いが、判決という形で結実した。
 判決は次のように言う。「自衛隊の活動、特に航空自衛隊がイラクで現在行っている米兵等の輸送活動は、他国による武力行使と一体化したものである。イラク特措法二条二項、同三項、かつ憲法九条一項に違反する」
 バグダッドが「戦闘地域」であり、そこへの武装兵員の空輸は「武力行使と一体化」したものであり、イラク特措法にすら反するものであるという指摘は重要である。判決は、イラク特措法は合憲であるとは言っていない。仮に合憲だとしても、そのイラク特措法に反すると明確に言っている。
 この判決は、違憲判決のまま確定した。政府は「国の勝訴なので反論ができない」と言っている。しかし、そうだろうか。原告たちの証人が今のイラク状況を証言したときに、国側代理人は反対尋問すらしなかったのである。「非戦闘地域」である、「武力行使ではない」と積極的に主張すればよかったではないか。国会に開示された自衛隊の輸送活動は、すみ塗りというか、まっ黒で、ほとんど情報は開示されなかった。
 私は、この判決は、国会がどんどん法律を作り戦争に加担していっている現実に、司法が「法の支配」の観点からすさまじい危機感をもち、気概をもって違憲立法審査権を行使したものだと思う。
 この判決を出した裁判長は、定年前に依願退職した。知り合いの弁護士が言う。「右陪席と左陪席の若い二人の裁判官の出世に将来ひびかないように、一人で責任をとって切腹したようなもんだよ」。たしかに。画期的な判決を出したあと、自殺した裁判官もいたっけ。自殺か退職覚悟でなければ画期的な判決を出せない司法なんておかしい。
 それにしても、司法よりもおかしいのは政治のほうである。航空自衛隊の幕僚長は「そんなの関係ねえ」と言った。「隊員の気持ちを代弁すれば、そんなの関係ねえというものではないか」と言ったのである。「裁判なんて関係ねえ」「憲法なんて関係ねえ」ということであり、まったくおかしい。判決は、現場の自衛官の行動を批判しているのではなく、政治の行為を「法の支配」の立場から判断しているのである。政府もこの判決を無視している。「法の支配」ということをいったいどう考えているのだろうか。
 この判決は、平和的生存権を具体的権利と認めた。私たち一人ひとりに平和的生存権があるということを認めたことは、非常に心強い。平和的生存権をもとに損害賠償を請求する裁判を起こし、場合によっては、慰謝料を認めてもらうこともできるのだ。
 一部の国会議員が作ろうとしている自衛隊海外派兵恒久法も違憲であり、許されないという声をもっと強めていくことができる。それにしてもこの判決は、いろいろ考えている。自民党新憲法草案は、九条一項はそのままにして、二項だけを変えている。ところが、この判決は「九条一項に反する」としているのだから、実は、自民党新憲法草案によっても、イラク派兵は明確に違憲となる。
 司法が気迫で違憲判決を出した。ボールは、国会と国民に投げられた。自衛隊はイラクから早期に撤退されるべきである。政府の違憲な行為は許されないということを実現すべきである。そして、多くの人にこの判決の意味を知ってもらい、自衛隊海外派兵恒久法を作らせないようがんばろう。




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