福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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規約人権委員会の審査
〈『部落解放』2008年11月号〉

 

 一〇月一九日から、スイスのジュネーブで、規約人権委員会の第五回の日本政府報告書の審査が行われる。どんな審査が行われ、どんな勧告がなされるのか、期待している。今回は、国際人権について書きたい。
 私は、二〇年前、ジュネーブに行った。トランクに、いろんなNGOからのカウンターレポートをいっぱい詰め込んで。第三回の審理が行われるので、その傍聴のためである。傍聴をし、昼食時に、その国連のカフェテリアで、規約人権委員の人をつかまえて、「一緒に食事をしてもいいですか?」と言い、食事をしながら、代用監獄の問題などを訴えた。迷惑だったかもしれない。
 一九八八年、二〇年前、国際人権の議論はとてつもなく新鮮だった。「強制連行してきた朝鮮の人たちの二世、三世にまで、外国人登録証の常時携帯を義務づけていて、しかも刑事罰で処罰するのはおかしいのではないか」など、委員の人たちの根本的、根源的でシャープな質問に感動した。「あっ、こんなふうに議論ができるのだ」と思った。
 勧告が出て、それをもとに、多くの人たちと日本の人権状況を向上させていくのだ、変えるのだと熱い思いをもった。ジュネーブで、そして、日本に帰ってからも本当にお世話になったのは、当時、ジュネーブの国連で働いていた久保田洋さんだった。ジュネーブの自宅で、レマン湖のほとりで、いろんなアドバイスをもらった。英語とフランス語を完璧に話せる久保田さんは、こんなにがんばっている日本人がいるのだと心強かった。久保田さんの影響を受けたNGOの活動家、弁護士の人たちは実に多いのではないだろうか。その後、久保田さんは、ナミビアの選挙監視に行かれて、亡くなってしまわれた。
 私は、その当時、部落解放同盟や部落解放研究所にたいへんお世話になった。規約人権委員会の一回目と二回目の審理のときの資料を友永健三さんに送ってもらったりした。「国際人権」という言葉もあまりない頃から、国連で活動をされてきたことに頭が下がる。
 一九九八年の規約人権委員会の勧告は、すばらしいものだった。独立した人権救済機関をつくれということも、代用監獄の廃止も、捜査の可視化も、証拠開示も、みんなはいっている。たとえば、この勧告のなかで採り上げられている刑務所の保護房の問題、革手錠の問題、受刑者の処遇などにとりくんできた。この運動もあり、また名古屋刑務所事件も起こり、みんなの力で監獄法が一〇〇年ぶりに改正された。国際人権の考え方や勧告がなかったら、この改正も実現しなかったかもしれない。国内の運動は重要だが、国際的な基準に合わせて向上させるべきだという国際的な動きも重要である。
 先日、規約人権委員長と委員が訪日し、最高裁や各役所の人たちと話をし、また議員会館で議員と交流し、かつ、役所の人たちと交渉した。その場では、捜査の可視化については、一部録音としか言わず、「全部録音すべきだ」ということは、肯定しなかった。死刑については、現在、協議中とのこと。個人通報制度については、明言をしなかった。ジュネーブへは、役所のほうも総勢三〇人ほどで行くそうである。
 審議が充実し、勧告が出たら、それを生かすのは、こちら国民の側である。
 そして、女性差別撤廃条約の日本政府報告書の審理が来年七月に行われる。勧告は、いつも大きな力になっている。女性への暴力の問題しかり、DVの問題しかり。雇用機会均等法に間接差別を入れる法改正を厚生労働省が提案し、法律改正が実現したのも、勧告の「威力」である。マイノリティ女性について政府が調査をすべきであるという勧告もすでに出ている。政府は、まだ調査をしていないけれども、部落解放同盟の女性たち、ウタリ協会の女性たち、在日韓国朝鮮人の女性たちそれぞれが調査をし、まとめた。また、行政交渉を行っている。個人通報制度についても交渉をしている。現在、多くのNGOがカウンターレポートをまとめている。二〇年間の運動の厚みと進展は大きい。




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