福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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医療を救え!
〈『部落解放』2008年12月号〉

 

 墨東病院に運び込まれた妊婦さんが出産のあと、亡くなってしまった。夫のインタビューをテレビで見たが、「今の時代にこんなことが起こるなんて」と言う夫の憤りと悲しみは、ひしひしと伝わってきた。このことは、氷山の一角だ。全国各地でいつだって起きて不思議ではない。現場の医師をはじめ多くの人たちの必死の努力で何とか支えているけれど、一人ひとりの医師が手を離し、また、各地でますます病院が閉鎖されていったら、一挙に医療崩壊が起きる。今、まさに手を打たなければならないときだ。
 去年一二月から「産声の聞こえる街づくり」プロジェクトをつくり、全国の病院、とくにお産の現場をまわってきた。
 岩手県遠野市では、二〇〇二年から市内に一人の産婦人科医もいない。市長が思いきって二人の助産師さんを公務員にし、公設助産院をつくった。妊婦さんは、雪道のなかを車を運転して一時間以上もかかる県立病院に行かないですむようになった。岩手では、車のなかで出産したという話や、妊婦さんが車に乗るときにタオルとハサミを持ち込むという話を聞いたっけ。遠野市の公設助産院では、遠隔地にある県立大船渡病院の産婦人科医とパソコンなどを使い、モバイル検診をやっていた。
 秋田県では、ある市立病院が「お里帰り出産お断り」という貼り紙をしなくてはならなくなった。意地悪なんかではない。勤務医の数が減り、受け入れを制限しなければ、医師が倒れてしまうのだ。院長は「二億円の赤字で苦しんでいる」と言っていた。国の予算規模からいったら、二億円は正直、多額ではない。院長は「道路特定財源ならぬ医療特定財源がほしいくらいです」と冗談をおっしゃった。どうして、地方の医療を救えないのか。
 長野県上田市にある産院は、廃止になりそうになったが、それこそ地域のおかあさんたちの「大変だ」という署名で存続が決まった。ここの国立病院は、派遣をしてくれている大学が産婦人科医を引き上げるということになり、大問題になっていた。常勤の麻酔医がいない。飯田市では、シンポジウムに参加した。市立病院と開業医と市と地域の人々で理解を深め、ネットワークをつくり、何とか支えていこうとしていた。駒ヶ根市の市立病院は、助産師さんはいるが、産婦人科医が一人もいなくなっていた。
 北海道の北見市では、たとえば、リウマチや膠原病を診る内科医がいなくなったので、旭川市や札幌に引っ越す高齢者の人がいるという話さえ聞いた。人口の移動が起こっているのだ。  沖縄の石垣島では、県立病院の院長さんに話を聞いた。「がんばってやっていて、病院の赤字というのは、他の赤字と違うと思うのですけどね」とおっしゃっていた。新潟、東京、佐賀……どこも大変だ。
 どこでも、がんばっている話と、大変な状況と医師不足を聞いた。  東京の矢島助産院を訪問し、また、まつしま病院を見学した。
 まつしま病院は、佐々木静子医師と多くの助産師さんがチームをつくり、病院のなかに保育園もあった。検診を医師も助産師も行ない、通常のお産は、医師も立ち会うが、助産師さんが行なう。何かあれば、帝王切開などの手術もできる。そして、もっと大変であれば、総合病院に頼むというネットワークができていた。
 矢島助産院では、お産をした人たちが和気あいあいとご飯を食べていた。地方でも、病院のなかに産婦人科と助産師さんたちの助産院の両方があるところもあった。助産師さんが、もっと赤ちゃんをとりあげられるよう制度を変える必要がある。
 とにかく医師の数を増やすこと。また、厚生労働省は、医師の配置についてもう責任をとって、身を乗り出してやるべきときだ。プロデュースをしないかぎり、医師の偏在は続く。また、勤務医の診療報酬を上げるべきだ。医療従事者の労働条件を改善する必要がある。そして、廃止や中止や民営化に自治体病院、公的病院が追い込まれているのは、大問題。国の税金を投入すべきである。




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