福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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横行する「派遣切り」
〈『部落解放』2009年1月号〉

 

 「派遣の契約更新拒絶にあいました」といったメールをよくもらうようになった。そこで、社民党で「派遣の切り捨てを許さない怒りのホットライン」を二日間、行なった。「年内に雇い止め。宿舎を出される」という相談。二三歳の大学生は大阪から電話。「就職先が見つからない。あるのは派遣社員だけ。しかし、派遣の友だちの話を聞くと、一日働いて三〇〇〇円余り。不安で仕方がない。どうすればよいか」。三九歳で自動車の部品のライン作業で派遣で働いていた女性は、一〇月一〇日に契約書で一年間更新されたにもかかわらず、一〇月二八日に「一一月二〇日に辞めてくれ」と言われたという。あと一年間は働けると思ったのも束の間、わずか一八日後に「首切り」を宣告されたことになる。
 いつ契約更新拒絶をされるかわからない、いつ中途解約を言われるかわからないというなかで、将来がまったく見えない「働かされ方」をしている。そして、いま、現実に「派遣切り」が行なわれている。
 一一月末に発表された厚生労働省の調査だけで、全国で約三万人が「派遣切り」にあっている。「解雇」「リストラ」は、最後の手段であるはずが、真っ先に起きている。派遣という働き方が景気の調整弁として使われてきたということが、いま、まさに一気に露呈している。もともとは、限られた専門職としてスタートしたはずが、二〇〇三年に、原則としてすべての職種に派遣が可能となった。したがって、製造業についても派遣が広がっていった。そして、いま、景気の悪化を理由に「派遣切り」がされている。正社員については、解雇するには正当な理由が必要である。しかし、派遣については、そのような理由なく、まったくの景気の調整弁として切り捨てられていっている。
 ところで、保坂展人衆議院議員が街頭演説をしていると、一人の女性に声をかけられたそうである。息子に八〇円切手を貼った封書が届いた。そのなかに紙切れが一枚はいっていて、「採用内定取消になりました」と書いてあったそうである。その女性は、「あんなに泣いてる息子を初めて見ました」と語ってくれたそうだ。無茶苦茶である。採用内定の取り消しには、合理的理由が必要である。そもそも社員を整理解雇するときには、判例上四つの厳しい要件が要求されている。「景気が悪くなったから」なんていう理由では、採用内定の取り消しはできないのである。こんな流れを止めなくてはと痛切に思う。
 ところで、品川駅の前に、京品ホテルという昭和初期にできたホテルがある。このホテルは、いま現在、労働者の人たちが自主管理をしている。私も何度か応援に行った。こういうことである。リーマンブラザーズの系列会社であるサンライズファイナンスがこの京品ホテルの借金を一手に集めてしまった。社長は土地を売却することにした。そこで、「土地を更地にする。労働者は全員解雇」となったわけである。これに対して、ホテルの直営店である飲食店で働く従業員たちが激怒した。自分たちはまじめに働いてきた。ホテルは十分黒字で、収益をあげてきた。それなのになぜ売り飛ばし、全員解雇なのか。働く人の首は、権利は、そんなに軽いのか……。このホテルで結婚式を挙げたという地元の年配の女性が「ホテルを壊さないで!」と激励をくれる。たしかにレトロな雰囲気のあるホテルなのだ。私は、つくづくハゲタカファンドが日本で何をしてきたのかと考える。そして、「ハゲタカファンドに負けるな」と思う。
 品川駅前で街頭演説をしていると、女性や男性が多く足を止めてくれた。勤め帰りの人たちである。きっと「明日はわが身」と思っているのだ。少なくともどこか自分につながっていると思ってくれているのだ。こんなに労働者の権利が軽くなっているなかで、「連帯」や「団結」「励まし合い」「負けてたまるか」ということを感じる。思えばこの一〇年、サラリーマンの給料は下がりつづけた。他方、株式配当は四倍の一六兆円。企業の内部留保は増えた。しかし、働く人の三分の一、若い人では二人に一人が非正規雇用になった。「正社員であれ、非正規雇用であれ、リストラを許さない」「派遣法改正」でがんばろう。




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