福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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ソマリア沖への自衛隊派遣
〈『部落解放』2009年4月号〉

 

 ソマリア沖の海賊対策で、自衛隊を派遣することについて書きたい。この原稿が活字になるころには、すでに出動命令が出ているかもしれない。
 国会の代表質問で、麻生総理に対して質問をした。総理の答弁は、「責務を果たすため、新法の整備までの応急措置として、自衛隊が海上警備行動によりソマリア沖における海賊へ対処するための準備を開始したところでもあります」というものである。
 今回の自衛隊派遣の問題点は、新たな立法なく、国会の関与も一切なく、自衛隊が出ていくということである。世界中には、日本人、日本の企業、日本の製品があふれている。それらが危険に瀕している、あるいは保護が必要なので自衛隊が派遣されるということであれば、いつでも、どこでも自衛隊が出ていくということになるのではないか。派遣の基準はいったい何なのか? 政府の胸三寸で、自衛隊を、国会の承認なくして、事前の議論すらなくして、勝手に海外へ派遣できるのか? シビリアン・コントロールは、なくなっていっているのではないか?
 イラク戦争のときに「駆けつけ警護」が問題になった。当時の自衛隊の幹部が「駆けつけ警護をして、武力行使をする」と発言したこともある。戦後、自衛隊は直接の武力行使をしていない。今回、もしソマリア沖に自衛隊が派遣され、海賊と撃ち合いになれば、戦後初めての一発は、このソマリア沖でなされることになる。
 このあと、自衛隊派兵恒久法案が議論されることになったときには、「もう武力行使はすでにしているのだし……」と、自衛隊の武力行使がどんどん容認されていくのではないかと、私はほんとうに心配している。
 武力行使をしないと定めた憲法九条を変えなくても、実質的に憲法九条を踏みにじる行為が続いていく。
 マラッカ海峡における海賊対策については、日本は海上保安庁が実績をもっている。なぜ今回、海上保安庁ではだめなのか。また、海賊対策といっても、ソマリアの内政が大問題である。ソマリアの無政府状態を立て直す援助こそ必要である。さまざまなNGOの人たちからヒアリングを行なった。この海域などに、かつて先進諸国が廃棄物を捨てたということがあるそうである。また、他国が海産物をゴソッととってしまったために、ソマリアにおいて海産物をとることが困難になったということも聞いた。「海賊退治」をしても海賊が生まれる土壌がなくならないのであるから、次から次へと海賊は生まれてくるだろう。
 沖縄出身の衆議院議員に興味深い話を聞いた。戦後、沖縄は大変ななかからスタートした。その沖縄にセンカアギヤー(戦果をあげる人)という言葉があったそうだ。米軍が土地を占拠して、多くの物資を有している。その物資の窃盗などをすることをセンカアギヤーと言ったそうだ。罪の意識はなく、センカアギヤーの人たちは、女性にもてたし、みんなあこがれたそうだ。学校の先生をやめて、センカアギヤーになった人さえいたと聞いた。もう今は沖縄も変わり、そのようなことはなくなった。灰燼に帰した沖縄で、センカアギヤーは生まれたのだ。私は、ここで、ソマリアの海賊は仕方ないと言っているのではない。しかし、国内の貧困問題が解決しないかぎり、海賊は次々と出てくるだろう。
 新法を作らずに自衛隊を派遣することは問題だが、海賊新法を作っても根本的な問題は解決しない。
 ところで、アメリカは、アフガニスタンに対して増派をしようとしている。オバマ大統領と麻生総理は、オバマ政権が三月末までにまとめるアフガン戦略の見直し作業に日本政府も参加することで合意した。何ということ!
 日本は、アメリカのアフガン戦略についていくという意思表示をこんなに簡単にしていいものか。かつてのイギリスもソビエトも、アフガン攻撃で失敗した。私は、オバマ大統領のアフガン戦略、テロとの戦いは、オバマ大統領の命取りになりかねないと考えている。日本は、違う形で日本としてアフガンに貢献すべきである。




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