福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

「参議院議員・弁護士 福島みずほのWebsite」はこちら



 

世襲議員の制限を
〈『部落解放』2009年7月号〉

 

 国会にいると世襲議員だらけという気になる。
 朝日新聞の調査によると、現職衆議院議員の四七八人中一一九人。全体の二五%、つまり四分の一である。自民党は一〇一人で、自民党議員の三三%。民主党は一三人で、民主党議員の一二%である。参議院だって、二世・三世議員は多い。次期総選挙に立候補を予定している八八一人のうち、世襲は一三三人(一五%)である。自民党の三三%、民主党の八%。麻生内閣では、一七人中一〇人であり、約六割である。
 総理大臣も小泉さん、安倍さん、福田さん、麻生さんと、総理は歴代、世襲議員が占める。総理大臣の息子や孫たちが、総理大臣を争うという非常に変な国。「歌舞伎の世界じゃないんだから、いいかげんにしてよ!」と言いたくなる。
 外国をみると、アメリカは、世襲議員はそれほど多くない。下院では親が連邦議会議員であった者は二三人(五%)、上院では親が上院議員であった者は五人(五%)である(二〇〇七年、二〇〇八年)。イギリスでは、下院議員六四六人のうち二〇人弱の議員が現・元議員の子であり、親と同一選挙区から選出されているのは一人である。
 私が、国政における世襲議員を制限すべきだと考えるのは、次のような体験からである。
 小泉内閣のときに、参議院で、格差是正や非正規雇用について質問をしていたときである。「フリーターの生涯獲得賃金は、正社員の四分の一。五二〇〇万円でしかない。これでは、マンションも買えないではないですか」と質問すると、野次が飛んだ。二世・三世議員からである。「がんばって働いてマンションくらい買え」と。
 非正規雇用の人がなかなか正社員になれないことを質問すると、「フリーターはフリーじゃないか」と、これまた二世・三世議員から野次が飛ぶ。「本人が好きでやっているのだ」という意味である。「フリーターはフリーだという野次が飛びましたが、フリーターの人はなかなか正社員になれないのですよ」と怒って、質問を続けた。
 何もわかっていないのだ。
 タクシーの運転手さんの平均年収は、タクシーの台数の規制緩和の結果、年々減りつづけている。平均年収が二〇〇万円以下の県は五県。沖縄は約一八〇万円である。ところが、かつての国立大学、国立大学法人の年間授業料は、何と五四万円である。これを国会で、小泉総理に対して質問した。
 「格差が拡大をしている。子どもたちが希望を持とうにも持てない。さっき総理は、やる気がある人間はやれると言いました。しかし、この委員会でも聞きましたが、たとえばタクシーの運転手さん、全国平均で年収三一四万円、沖縄は一八〇万円台です。ほんとうにどうやってこの賃金で子どもを大学にやれるんですか」
 これに対して小泉総理は、「お子さん自身が教育を受けたいという意欲があるなら、収入の多寡にかかわらず行けるような制度は日本としては持っております」と答弁した。
 そうだろうか。親の経済的事情などで、高校や大学進学をあきらめたり、退学をしなければならない子どもはたくさんいる。経済的な事情がちっともわかっていないと思った。
 政治は、主権者であるみんなのものである。しかし、実際はそうなっていない。議員には、いろんな人が、いろんな思いでなるべきなのに、日本の国会のこの世襲議員の多さはやはり変である。
 また、親の持っていた政治資金を子どもが引き継ぐのに、税金がかからない。地バン、看バン、カバンを引き継いでいく。多額の企業献金なども引き継いでいく。これは「利権」の相続といえないか。地域のなかなどで「利権の構造」が張りめぐらされ、それが、本人が亡くなっても存続し、子どもに引き継がれる。政治が「一部の人」のためのものとなっていく。
 私は、新しい政治改革として、天下りの禁止、企業・団体献金の禁止、国政における世襲の制限の三つをやるべきだと考える。親の地盤以外の所からなら立候補できるとすればいいのではないか。
 「利権構造」からの脱却こそやるべきことである。




「福島みずほの人権いろいろ」index


HOME


JINKEN BOOKは、(株)解放出版社が提供しています。 無断転載を禁じます 。
Copyright (C)Buraku Liberation Publishing House Co.,ltd 2001, All Rights Reserved


E-mail

(株)解放出版社
Phone:06-6581-8542(代表) Fax:06-6581-8552
東京営業所: Phone:03-5213-4771(営業) FAX:03-3230-1600