福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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あきらめないで、がんばる
〈『部落解放』2010年7月号〉

 

 東京高等裁判所で、先日、狭山事件の証拠の開示がなされた。録音テープも出てきた。否認をしているときのテープはなく、一部分の証拠開示なので、そのこと自身はもちろん問題だが、弁護団は一貫して証拠開示を求めてきたので、感無量だった。すべての証拠が開示されたわけではなく、弁護団が指摘してきたルミノール反応の記録などは「ない」という回答だった。しかし、ともあれ裁判所の勧告にもとづいて証拠開示がなされたので、大きい一歩である。
 かつていくつもの有名なえん罪事件の再審開始決定が、証拠開示によって新たな証拠が出てきたことが契機となったことからか、証拠開示がほとんどなされなくなった時期が続いたように思う。志布志事件、氷見事件、足利事件などえん罪事件の問題点の共有、捜査を可視化すべきだという立法運動、そして、狭山事件の当事者・石川一雄さん、早智子さん、多くのみなさんの粘り強い運動の成果としての証拠開示だと思う。出された証拠を分析し、再審開始決定を勝ち取っていきたい。それにしても、いままであまりに長い歳月。あきらめないで、がんばるということの重要性をつくづく思う。
 同じことを、他の運動でも痛感している。  障害者自立支援法案が議論されていた成立前のとき、障害者の人たち一万人が、国会前に請願デモにやってきた。氷雨の降るなか、松葉杖で、車いすで、ほんとうに命をかけてデモにやってこられた。
 ある女性が、真剣な表情で私のところへやってきた。「私の子どもは、障害者です。福島さん、あなたに託しているんだから、成立しないようにがんばってくれなきゃ」。そう言って、立ち去っていった。だから、障害者に一割負担をさせる障害者自立支援法が成立したときは、打ちのめされた思いがした。「あなたに託しているんだから」とまで言われたのに、成立してしまったと。
 しかし、その後、障害者の人たちは、さらに一万人の請願デモや集会、障害者権利条約への取り組みなど運動を活発化させ、熱心にとりくんだ。去年、政権が代わり、一二月に内閣に障がい者制度改革推進本部が設置され、総理が本部長、私と官房長官が副本部長となった。そして、その本部のもとに、障がい者制度改革推進会議が設置され、障がい者総合福祉部会もできた。いま、障害者自立支援法に代わる障がい者総合福祉法を作ろうと議論している。障害者差別禁止法も制定する予定である。推進会議や部会には、多くの障害者の人たちに参加してもらっている。
 障害者施策を前進させようという大きな動きは、障害者自立支援法の成立に反対した人たちのエネルギーの、まさに延長線上にある。
 自公政権のもと、「数の論理だから仕方ない」とみんなが考えていたら、こんな展開にはならなかったと思う。がんばって、がんばって、がんばったあかつきに、次の展開が開けたのだ。
 私は、障害者の人たちのこの運動から「あきらめないで、がんばる」ということを教えてもらった。
 国鉄労働者の一〇四七人の不採用問題も、この連立政権下で一定の成果と結論が出た。二三年余にわたる長い長い闘争の歴史。多くの方が当時、自殺をされ、その後も長い運動が続いた。
 去年、連立三党の党首で食事をしたときに、「人道上の問題なので、解決しましょうよ」と呼びかけたら、鳩山総理も亀井代表も同意してくれたのだ。狭山事件ではないけれど、長い長い運動の歳月。当事者、家族の苦労や支援者の人たちの熱い励ましには、心が痛くなったり、熱くなる。この問題も、「あきらめないで、がんばれば、解決する」ということをあらためて教えてくれた。
 今国会で成立したシベリア抑留者の法律も、水俣病問題の解決も長い間の人々のがんばりがあってこそである。
 なぜ、いま、こんなことを書くかというと、普天間基地の問題の解決にあたって、とにかく「あきらめないで、がんばろう」と思っているからなのだ。アメリカには、何も言えない、仕方ない、こんなものだと思っているかぎり、何も展望は開けない。未来は、切り開けない。あきらめないで、がんばって、がんばって、がんばり抜くことが、必ず次の展望を生むと信じている。多くの人が解決しようと思えば、解決できるのである。力を合わせたい。




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