福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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なぜ署名を拒否したか
〈『部落解放』2010年8月号〉

 

 五月二八日、日米共同声明で、辺野古沖に基地を造るということが発表されました。それを受けて、閣議に出される書面に、やはり辺野古に基地を造ることをすすめるということが明記されると基本政策閣僚委員会で示されました。辺野古からはじまって、なぜ辺野古に戻るのか。沖縄の人たちの民意は、「県内移設NO!」なのに。
 私は、「国外移設が一番」「辺野古の海に基地を造らせません」と沖縄の人に、国民に、約束をしてきました。ここで、閣議で、書面に署名をしたら、辺野古に基地を造る政治に加担することになります。「共同正犯」にはなりたくないと思いました。反対であり、署名をしませんと言って、私は大臣を罷免されました。
 私は、総理に「自分の言葉に責任を持つ政治をやりたいと思います」と言いました。もし署名をしていたら、次の日の新聞の見出しは、「社民党閣議署名へ、辺野古容認、裏切り、変節」となっていたでしょう。その時点で、国民の信頼はなくなっていたと思います。
 このときに、いろんなことを考えました。
 二〇歳のころを思い出していました。
 男女平等がずーっと私のテーマでした。私は、そのころ、「姓を変えたくない」「性別役割分業にとらわれない生き方をしたい」と悩んだり、考えたりしていました。結局、三〇歳で、結婚届を出さずに子どもを産んで、パートナーと暮らすという生活をしています。選択的夫婦別姓と婚外子差別撤廃、民法改正をなんとしてもやろうとしています。
 二〇歳のころは、自分がどう生きていくのか、自分の思いと社会の間で悩んでいました。この社会を生きづらいと思っていたのですね。
 そのころ、鏡にうつる不安そうな自分を見て、自分に言い聞かせていました。「世界中の人をだませても、自分をだますことはできない」と。社会のなかの「当たり前」でない生き方をしたかったのですね。
 私が、同性愛といった性的マイノリティの人たち、さまざまなマイノリティの人たちの運動に共感を覚えるのは、私が二〇歳のころを思い出すからです。自分の思いを貫こうとすると、社会の壁にぶちあたります。でも自分を偽って生きていくと、生きている感じがしないのです。自分が同性愛だとカミングアウトをすると、親はびっくりするし、社会の差別を受けます。しかし、自分を偽って生きていくのは、生きている気も実感もなくなっていってしまうのです。
 今回、閣議で署名をしないということについては、もちろん、約束したことを守らなければいけない、沖縄の人たちを裏切れない、新基地建設はまったく不当だという思いが第一です。それと同時に、自分自身の、自分たちの生き方として、「自分を偽って生きていっても、生きている感じがしない」ということを思っていました。
 ところで、今回のことを第四次琉球処分と言う人がいます。もし、私も含めてすべての閣僚が、閣議で署名をしていたら、沖縄の人たちは、政治すべてに切り捨てられたと思うでしょう。「差別の問題だ」と言う人もいます。私もそのとおりだと思います。沖縄の明示的な拒否の意思が示されているのに、なぜ政治がそれを切り捨てるのか、まったく理解ができません。
 普天間基地の問題、沖縄の問題は、地名だけの問題ではありません。人権の問題であり、差別の問題であり、人間の尊厳の問題であり、平和の問題であり、環境の問題です。一部の人たちに、犠牲や負担を強いていいのかという問題です。日米安保条約があるからという理由で、あるいは「抑止力」を理由に、犠牲や負担を強いられたら、たまったものではありません。
 話は飛躍しますが、イラク戦争のときに、大量破壊兵器がある可能性があるからイラクを攻撃するのだと、アメリカ政府も日本政府も言ってきました。私は、ひどい理屈だと思いました。殺されるイラクの人はどうなるのかと。
 困難や犠牲を強いられる人、困難を抱える人(ほとんどの人が何かを抱えていると思います)に応える政治を多くの人とつくっていきたいと思います。




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