福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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若い人たちの涙
〈『部落解放』2010年9月号〉

 

 街頭演説をしていて、実にたくさんの人の涙を見た。とりわけ若い人たちの雇用についての涙を。これは、初めての経験だった。
 千葉県では、若い女性と話をしていると、彼女はこう言った。「福島さん、私は、学校を卒業したけれど、なかなか就職先が決まらないんです。『自己責任』と言われて、辛いんです」。彼女は話しながら、大粒の涙を流した。
 横浜駅で、やはり二〇代と思われる女性。「私、一人ぼっちなんです。お父さんが死んでしまって、家族はバラバラ。会社をクビになってしまって」。彼女も話をしているうちに、涙がたくさん流れてきた。
 愛知県豊橋市では、派遣切りにあった人の話を聞いた。
 新宿駅では、まさに切羽詰まった口調と様子で、何とかしてくれと言われた。彼はがっちりした体格で、「何度も何度もハローワークに行っているけれど、職が決まらない。もうじき雇用保険が切れてしまうんだ」と。
 年配の女性も訴えてくる。「息子が二人いるけれど、二人とも正社員ではないんです。だから毎月の給料も乱高下して、収入が一定しない。アパートの家賃を払えないから、家を出られないんですよ。若者の雇用を何とかしてください」
 障がい者の政策について話をしていたせいか、御茶ノ水駅でこう聞かれた。「障がいのある子どももこの社会で元気で生きていけますか?」。ぱっと見ると、赤ん坊を抱っこひもで抱っこしている女性である。障がい者総合福祉法や障がい者差別禁止法をつくろうとしていること、障がい者制度改革推進会議で、法制度づくりを進めていることなど、必死で話をした。彼女は、抱っこしている赤ん坊を見せてくれた。鼻にチューブを通している。彼女は、眼にいっぱい涙を浮かべていた。彼女の問いを、どれだけの親がいままで心の中で問うてきただろうか。障がいをかかえた子どもが生きづらい社会を何とか変えてほしいという精いっぱいの思いを伝えてくれたのだと思う。だからこそ障がい者制度改革推進会議や国会は、がんばらなくっちゃと思う。
 ベビーカーを押しているママからも「きょう、役所から『保育所にはいれません』と言われました。待機児童解消、何とかしてください」と訴えられる。
 五〇代の男性。「大阪で仕事をしていたけれど、親の介護で仕事を辞めて東京に戻ってきた。どうしようもなくて、親を施設に入れようと思うんだけれど、はいれるところがなくて」
 介護に従事する男性。「介護で働く人の労働条件を何とかしてください」
 どの人の訴えも政治に直結している。政治が何でもかんでも個人の問題を解決できるわけではないが、どの人の訴えも、法制度を変えたり、政策を変えることで、解決したり、本人を応援したりできる。
 私は実は、いままでももちろん、高齢の人の「私の年金は五万円で、ここからいろんな保険料を引かれ、家賃を払うと、手元にほとんどお金が残らないんですよ」という訴えは聞いてきた。年金についての不満や不安はいっぱいだ。しかし、今回初めてだったのは、若い人たちの涙をたくさん見たということである。
 新聞が、大学を卒業しても就職先が決まっていないので、卒業ではなく、「留年」を選ぶ人が七万九〇〇〇人に達していると報道した。その七万九〇〇〇人一人ひとりに、そして、その人のまわりの家族などに、どれだけの涙と不安と苦労があるかと思う。
 私は、大臣のとき、自殺対策も担当していた。年間三万人以上の人が死に追いやられていて、ここ十数年、三万人以上が続いている。二〇代、三〇代の死因のトップは自殺である。どれだけ多くの人が助けやサポートをなかなか得られずに、一人でもがいて苦しんでいるかとほんとうに思う。
 働く人の法律をきちんと作り直すこと、社会保障制度や福祉の立て直し、障がい者をはじめ人権が保障される社会をつくること。多くの人と力を合わせて、確実に変えていくしかない。たくさんの宿題を街頭でもらった。




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