福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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村木さん事件の徹底検証を
〈『部落解放』2010年12月号〉

 

 村木厚子さんの事件から浮かび上がってくるものを、いまとことん検証して、改革を実現しなければと張り切っている。
 まず第一に、最高検の責任についてである。前田・佐賀・大坪検察官VS最高検という図式で語られることが多いが、ほんとうにそうだろうか。
 国会で質問をして確認した。「逮捕・起訴とも大阪地検は大阪高検、最高検とも協議をいたしまして、了承を得たものと承知しております」というのが政府答弁である。逮捕・起訴について、最高検も了承している。しかし、村木さんの逮捕・起訴はそもそもおかしい。
 この事件は「議員案件」と呼ばれた事件である。ある国会議員の要請があって、それを聞いて無理なことをしたというのがポイントである。しかし、その国会議員の聴取をするのが、村木さんの事件の起訴後二カ月以上たってからである。まったくおかしい。肝心で重要な参考人である国会議員の取り調べをしないまま、なぜ起訴ができるのか。国会議員には、アリバイがあった。調べればすぐわかったことをなぜまったくしなかったのか。起訴前に国会議員の取り調べすらしなかったことは、最高検も熟知していたこと。なぜ起訴に最高検はゴーサインを出したのか。奇怪なことで、理解できない。
 また、六月一日と六月八日の日付のことである。偽の公文書データの最終更新日付が六月一日だとする捜査報告書が出てきたところで、六月上旬に村木さんが部下に指示を出したという「ストーリー」が破綻しているのだから、そもそもはじめからやり直すか、逮捕そのものがおかしいのである。「ストーリー」が成り立たないという時点でやめるべきではないか。しかし、逮捕・起訴し、公判を続け、一年六カ月の求刑をしている。
 一月二七日の第一回公判期日に弁護人は、日付が食い違っていることから、「検察が描いた構図は破綻している」と主張している。このときに問題点は出ているのである。そして、五月末に、上村被告たちの供述調書の大半を証拠採用しないことが決まる。四三通の検察官面前調書のうち三四通が却下になるのである。
 この数日後、最高検は、大阪地検にメールで質問状を出し、却下決定で指摘された事項について報告を求めている。フロッピーディスクの日付の問題もはいっている。このことは、私が国会で質問をしたときに、政府は認めた。ということは、最高検は、捜査などについて何らかの問題があることは知っていたのである。最高検は、逮捕から判決まで関与している。大阪地検だけの問題ではないのである。問題を数人の検察官だけの問題にしてはならない。
 次に、いまこそ捜査の可視化と証拠の全面開示が必要である。村木さんの代理人であった弘中弁護士の話を聞いたときに、「上村さんが虚偽の自白をしていくことを防止するには、捜査の可視化こそ必要だった」旨、おっしゃっていた。村木さんのように一貫して否認できる人のほうが実は稀なのである。
 えん罪が続くたびに捜査の可視化がいわれる。いまこそ全面的な捜査の可視化と全面的な証拠開示を実現するときである。
 名古屋刑務所事件が起きたときに、当時の森山法務大臣は、行刑改革会議をつくり、百年ぶりに監獄法を改正した。もちろん改正には、多くの人たちの努力があった。今回の検察の事件は、だからこそ制度を変える大きなチャンスであり、ずーっとみんなで取り組んできた捜査の可視化と証拠の全面的開示を、恣意的な運用がなされないよう立法で実現をすべきなのである。狭山事件をはじめ多くのえん罪事件に取り組んできた人たちと力を合わせて実現したいと心から思っている。
 そして、検察の文化も変えるべきなのである。判決で無罪判決を出してはならず(日本は、有罪率は九九パーセント以上である)、事件が無罪ではないかと思われても、公判は続き、論告求刑も行うのが現状だ。検察官は、公益の代表者でもあるから、公平な裁判をしなければならないのである。有罪を否定する証拠なども開示せよと規定するアメリカ法曹協会法律家職務模範規則3・8(d)のような検察官倫理規定もつくる必要がある。




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