福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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大逆事件百年後の意味
〈『部落解放』2011年3月号〉

 

 二〇一一年一月二四日は、大逆事件で幸徳秋水さんたち一一人が処刑されて、ちょうど一〇〇年目の日であった。管野スガさんは、二五日に処刑されている。天皇暗殺を企てたということで、全国の多くの人たちが逮捕され、一二人が死刑、一二人が無期懲役になった。
 拷問や自白強要があり、証人申請はまったく認められなかった。一九一〇年一二月一〇日に裁判が始まり、年内に結審、一九一一年一月一八日に判決が出るという、しかも大審院一審だけのスピード裁判である。そして、判決からわずか六日後に処刑されたのである。
 死刑執行の二週間前にあたる一月一〇日、幸徳秋水は、「今回事件に関する感想をとのことでしたが、事ここに至って、今はた何をかいわんやです。またいおうとしても、いうべき自由がないのです。思うに百年の後、だれか私に代わっていってくれる者があるだろう、と考えています」と書いている。
 高知、岡山、和歌山などで、それぞれ大逆事件の真実をあきらかにし、被告人となった人たちの名誉を回復する運動が粘り強く続けられている。各地でも集会が催される。
 ちょうど一〇〇年目の一月二四日に、議員会館でも集会を開くことにした。題は「大逆事件百年後の意味」。約三〇〇人の参加があった。
 鎌田慧さん、「大逆事件の真実をあきらかにする会」の世話人である大岩川嫩さんが、基調講演をし、十数名以上の国会議員の発言、そして、早野透さん、中森明夫さん、安田好弘さん、木村まきさん、中村文雄さん、藤原智子さん、大杉豊さんなどがリレートークをしてくださった。
 うれしかったのは、七六歳のむのたけじさんがこの集会に「明治維新以降の日本の歴史を、国定教科書を裏返しにした角度から洗い直し、見つめなおす。この作業を進めよう」とメッセージを送ってくれたこと、岡山・高知・和歌山で、大逆事件にずっと取り組んできた会が、それぞれすばらしいメッセージを送ってくれたことである。
 和歌山からわざわざ、佐藤春夫記念館館長で、「大逆事件」の犠牲者を顕彰する会の辻本雄一さんもきてくださり、新宮市議会(和歌山県)で六人の犠牲者に対する名誉回復宣言が全会一致でなされたことや現在の取り組みについて話をしてくださった。
 また、新宿区富久町中町会の町会長と町内の方もきて、発言してくれた。この町内会の人と日本弁護士連合会は、一九六四年に「刑死者慰霊塔」が建てられて以降、毎年お彼岸のときに慰霊祭を開いてきたのである。この「刑死者慰霊塔」は、新宿区富久町の児童遊園内に設置されている。この場所は、旧市ヶ谷監獄の刑場があったところである。市ヶ谷刑務所ができてから一九一五年に廃止になるまで、この刑場で約二九〇人が処刑されている。大逆事件の一二人も含まれている。富久町中町会のみなさんは、この慰霊碑を守り、毎年、日弁連と共催で慰霊祭を行っているのだから、頭が下がる。
 大逆事件は、一九六七年に最高裁で再審請求を認めない決定が出ている。一九六一年に、坂本清馬さんと森近運平さんの妹が再審請求を行い、多くの人と闘っていたのに、そっけない棄却決定である。
 えん罪事件であり、政治的な弾圧事件であり、国内のさまざまな運動を弾圧しようとして、広範囲な人々をフレームアップした事件である。いま、多くの人と捜査の可視化や死刑廃止に取り組んでいるが、現在の問題とも直結している。そして、表現の自由や集会結社の自由などが侵害されることもある今日、自由が侵害されることのない社会を不断につくっていく必要がある。
 これが、私たちが一〇〇年後に考えなければならないことである。
 ところで、私は、黒岩比佐子さんの『パンとペン―社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』で、堺利彦さんを再発見した。一〇〇年前、差別の根絶、反貧困、非戦、自由、平等を掲げて、苦闘した先達たちの思いを、多くの人と、現在、あらためて実現していきたい。




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