福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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「抑止力」は方便だった
〈『部落解放』2011年4月号〉

 

 鳩山前総理が、米軍普天間飛行場の移設問題をめぐって、「県外」断念の理由とした在沖米海兵隊の「抑止力」について、「辺野古しか残らなくなった時に理屈付けしなければならず、『抑止力』という言葉を使った。方便といわれれば方便だった」と発言した。これに私は驚いている。怒っている。
 沖縄のなかに新基地を造ることに理由がなかったが、「抑止力」を方便に使ったと発言をしたわけだから、理由なく基地を押し付けられた沖縄の人たちが激怒するのも当然だ。総理が理由がないことを知りながら、沖縄県内に決定したのであるから、決定をこそ見直すべきだと思う。
 私は、沖縄に海兵隊がいることは抑止力ではないとずーっと思っている。沖縄に海兵隊がいる必要はないのだ。イラク戦争のとき、大多数の海兵隊の人たちは、イラクへ行っていた。沖縄には、ほとんどいなかったのだ。海兵隊だけではない。湾岸戦争のとき、イラク戦争のとき、日本にいる米兵の多くは、戦地へ赴いた。「抑止力」というけれど、実際いないのであれば、なぜ存在が抑止力なのか。
 また、沖縄の海兵隊をピックアップするためには、佐世保港から艦船が出発し、沖縄で乗せることになる。けっこう時間がかかるのである。沖縄である必要はない。
 そもそも沖縄の海兵隊はグアムへ行くというのが、アメリカの戦略である。沖縄の海兵隊の抑止力をいうが、沖縄の海兵隊が基本的にグアムへ行くことをどう考えるのか。沖縄の海兵隊がグアムに行くということを口実にされ、日本は多額の経費を負担するのではなかったか。
 鳩山前総理の発言は、正直といえば正直だ。唐突に「抑止力」の発言が出てきて、当時びっくりしたものだ。「学べば学ぶにつけ、海兵隊のみならず沖縄の米軍が連携して抑止力を維持していると分かった」と言ったのだ。私は、「学べば学ぶにつけ、抑止力とは関係ないことがわかった」と言うべきでしょうと怒ったものだ。そして今回、自分の発言が「方便」といわれても仕方ないと言い、あっさりと理由がないことを認めたのだから、驚くべきことである。
 私は考えを変えず、理由のないことに賛同できないと、辺野古移設の閣議決定への署名を拒否し、罷免になった。理由がないとわかっていた総理に罷免されたのだから、むちゃくちゃだ。理由がないことがわかっていたのだったら、そもそも日米共同声明に辺野古移設を盛り込むべきではないし、中身を変えるべく総理はがんばるべきだったのである。日本の最高権力者。権力を行使して、変えるべくがんばるべきだし、そもそもこんなに困難なことに結論を出すのに、五月末という期限を切ってはいけなかったのだ。「自分の在任中四年間の間に何とか解決したい」と言ったとしても、その結論が「国外、最低でも県外」であったならば、沖縄の人たちは納得したはずだ。アメリカも沖縄も焦ってはおらず、また、簡単に解決策にたどりつくことはできないことは、多くの人の了解事項であったはずである。
 私を罷免したあと、数日後に鳩山総理は辞任した。日米共同声明を出す前に辞任をするか、あるいは、五月末の期限を延ばすか、まだやり方はあったのではないか。
 政治に「たら」「れば」はないので、前総理が「方便だった」と認めたことを未来に生かすしかない。日米共同声明で、辺野古の沖に海上基地を造ると決めたことに理由があるのか、新たな基地を造る必要があるのか、とことん議論をしていきたいし、日米共同声明の変更を求めていきたい。
 それにしても、と思う。国会のなかでも、メディアのなかでも「日米関係を揺るがせてはならない」「日米関係を強固なものにしなければならない」という呪縛があまりに強い。みんな激しいマインドコントロールにかかっているのではと思うほど。自分たちの意見すら言えない関係って何なのだろう。イラク戦争に協力していった心理や姿勢につながっている。抑止力にしろ、日米関係にしろ、日米安保条約にしろ、とことん議論していこうじゃないか。




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