福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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原子力政策の転換を
〈『部落解放』2011年5月号〉

 

 二〇一一年三月一一日の前と三月一一日の後とで、世界が変わってしまった。物事の優先順位が変わってしまった。政治の優先順位も変えなければならない。亡くなられた人は、一万人を超えている。胸がつぶれるような大災害である。家族と家と仕事を失い、避難している人たちの大変さを救援することを、政治は最優先でしなければならない。地域再建、生活再建を優先し、人間の復興をしなければならないと思う。
 予算については、高速道路の無料化や子ども手当の上乗せ分はカットし、また、法人税の引き下げはせず、法人税引き下げでなくなる一兆五〇〇〇億円の税収は確保すべきである。
 東日本震災への対応も最重要だが、今回、大問題となったのは、原発震災である。いまも一刻一刻、予断を許さない状況である。現場で被曝した人たちについて、心が痛む。原子力発電所を国と電力会社が推進してきて、大事故になると、現場で働く人たちが被曝をしながら働かなければならないことも大問題である。
 そして、私たちは、今後も長いこと、放射性物質とたたかいつづけなければならないのである。
 私は、国や東電などが今回の事故を過小評価してきたことが問題だと思う。原子力安全・保安院は、事故後間もなくその深刻度を「レベル4」と推定していた。米スリーマイル島原発事故は「レベル5」である。スリーマイル島原発事故は、冷却系が大丈夫であった。だから、外部への放射性物質のもれはまだ少量にとどまった。しかし、今回、福島第一原発は、すべての電源が失われ、冷却がうまくいかなかったのである。「冷やす」ということがうまくいかなければ、放射性物質を「閉じ込める」ことができなくなる。再臨界の可能性もゼロではない。現在、原子力安全委員会は「レベル5」としているが、当初から、「冷却」がうまくいかず、燃料棒が損傷していることはわかっていたわけだから、「レベル4」というのは、甘かったのではないだろうか。
 一二日の一五時、官邸に行ったときに「現在、一〇キロ圏外へということだが、もっと避難を拡大すべきだ」と言った。しかし、その時点での答えは「これで十分である」というものだった。いまでも二〇キロから三〇キロの人たちについては、屋内退避である。そんなに長い間、屋内退避ができるわけではない。せめて子どもや妊婦のいる家庭から先に避難させ、三〇キロ圏外へと全員退避させるべきだとずーっと主張してきたが、まだ実現していない。混乱回避よりも命を優先すべきである。
 東京のある浄水場で、放射性ヨウ素が乳児の許容量を超えているという報道に胸がしめつけられる思いだった。西日本からでも大至急、水道水を運び、乳児だけではなく、子どもたちを守るようにすべきである。このことは、政府に対しても要請してきた。
 チェルノブイリの子どもたちに顕著にあらわれたように、子どもたちは、大人にくらべて放射線の影響が大きい。甲状腺ガンになる子どもたちが多くなったといわれている。大人たちは、子どもたちを守るべきであり、未来を汚してはならないと心から思う。空気や土や水や海水が、ずっと出つづけている放射性物質によって汚染されつづけている。
 最近、ある子にこう言われた。「大人たちが原子力政策を転換できなかったから、私たち子どもが被害にあい、未来に対してツケを払わなければならないんだ」と。そのとおりである。
 浜岡原発の裁判で、二〇〇七年二月一六日、地震などで非常用ディーゼル発電機が二個とも起動しない場合に大変なことになるのではないかと質問を受け、原子力安全委員会委員長は、「そのような事態は想定しない。そのような想定をしたのでは原発はつくれない。だから割り切らなければ設計なんてできませんね」と言っているのである。
 今回の事故は、多くの裁判で争われてきたものであり、このことを無視して、国も東電なども原子力政策を推進してきたのである。いまこそ、原子力政策をみんなの力で転換していこうではないか。




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