福島みずほの人権いろいろ


月刊誌『部落解放』好評連載中コラムを福島みずほさんのご了解を得て、転載いたします。

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10万年後の未来は?
〈『部落解放』2011年9月号〉

 

 知り合いの弁護士がかつて、フィンランドに放射性廃棄物を貯蔵する施設を造る計画があるので弁護士会で視察に行くと言って出かけた。「どうだった?」と聞くと、「とてものどかなところに造るのだよね」と言っていた。
 フィンランドの最終処分場、オンカロ。オンカロとは、フィンランド語で洞窟、穴などを意味する。このオンカロを描いたドキュメント「100000年後の安全」を見に行った。正直、一〇万年後のことをリアルに考えていなかった。このドキュメントを見て、原発や核のとんでもなさをさらに痛感した。
 だれも責任をとれない。
 世界中の原発のうち最終処分場が決まっているのは、フィンランドだけであり、現在、他の国の高レベル廃棄物は暫定的なところに置かれている。フィンランドでは、二〇〇四年から調査が始まり、二〇一二年に許可が出て、二〇二〇年から操業が開始される予定である。
 地下都市のような遠大な計画。今世紀中に完成するかどうかと言われている。
 一〇万年の保管と言われて気が遠くなるが、アメリカ政府は二〇〇九年二月、「高レベル放射性物質は、一〇〇万年監視しなければならない」と発表した。一〇〇万年かぁ。日本は縄文時代だって、たかだか三〇〇〇年前にしかすぎないのである。
 このドキュメントが優れているのは、わたしたちを一〇万年後の未来に連れていくことである。一〇万年後はどうなっているだろう。
 それまでに氷河時代がきて、生き物の姿はまったく変わってしまうのではないか。どんな文明を持っているか。未来の考古学者などが開けてしまうのではないか。「これは高レベル放射性物質で絶対に開けてはならない」と警告文を出しておいても、未来の生物がそれを読むことができるか。開けるなと言われても、ピラミッドやさまざまな古い構築物を開けてきたのが人間である。警告文を読めても果たしてそれに従うか。そもそも警告文を出しておいたほうがいいのか、それとも一切封印をして、未来の生物たちがむしろ気がつかないようにしたほうがいいのではないかと。
 大真面目に議論をしている。それほどまでに先のことなど、だれも責任をとれない。
 原発賛成であれ、原発反対であれ、原発から出される大量の放射性廃棄物の処理を考えなくてはならない。ロケットで宇宙に飛ばしたらどうかという意見もあったそうだが、スペースシャトルの発射直後の爆発事故でなくなったそうだ。それはそのとおり。上から降ってくる原爆になりかねない。海底に埋めるのも、「いのちの母」である海が汚染されたら大変と、これもなくなった。
 地層に埋めるしかない。しかし、このドキュメントを見ながら深いため息をつく。
 スウェーデンやフィンランドは地震のきわめて少ない地域である。北欧のフィンランドからスウェーデンを形成する一帯の地質は、二〇億年前という時代のものである。硬い岩盤が存在している。
 それに比べて、日本は地震多発国であり、かつそんなに古い地層ではなく、しかも硬い岩盤など存在しない。おまけに日本はきわめて地下水の豊かなところ。地震などで壊れる、溶け出すとなると、農業用水、生活用水などに甚大な被害を及ぼす。一〇万年、一〇〇万年どころではない。
 日本は使用済燃料を再処理する方針をとっているが、そもそもこれが頓挫している。やるべきではない。青森県の六ヶ所村の再処理工場に使用済燃料が運び込まれているが、本格操業ができず、貯蔵施設受け入れ容量三〇〇〇トンに対し、現在すでに二八〇〇トンが運び込まれ、ほぼ満杯状態である。各原発に使用済核燃料は置かれており、冷却できなくて大変なことが、福島原発事故でも明らかになった。
 日本では、高レベル放射性廃棄物の最終処分場は決まっていない。いや、決められないというべきだろう。どこだって、危険である。どこのだれが引き受け、どのように管理できるというのか。
 毎日毎日、原発を動かして、放射性廃棄物が出る。できるだけ少なくするために、できるだけ早く原発をとめるべきだと心から思う。




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